【空力徹底】タイムトライアルジャパン2015に挑戦②
by: 佐野 隆

 

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◯タイムトライアルジャパン2015の詳しい情報はこちら→大会公式ホームページへ

 

◯2014年の過去ブログはこちら→【空力徹底】タイムトライアルジャパン第二戦

 

◯前回のブログはこちら→【空力徹底】タイムトライアルジャパン2015に挑戦①

 

 

1_結果

個人アルティメットの部/20位(出走43人中)

個人ノーマルの部/8位(出走48人中)

サプライズ1000/6位(出走19人中)

 

2_機材

今回は山岳タイムトライアルに近いコース設定のため、空力と軽さのバランスが重要となる。

ヒルクライムに適したポジションを優先させたため、普段TTで使用しているスライスRS(※)のブルホーンハンドルでは不利と考え、ドロップハンドル仕様のロードバイクをアルティメットカテゴリーでも選択した。

 

※空力では絶対性能を誇るスライスRS→【空力徹底】NISHIGOバイシクルフェスに挑戦③

 

 

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photo2-1:普段はTTポジションの練習用として使用しているCERVELO 旧S2バイク。フォークは平地での安定性を優先させOF50mmのモデルに変更してある。この状態で完成重量は8.0kg.

 

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photo2-2:ドロップハンドルにVISIONのクリップオンバーを装着。

 

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photo2-3:POWERTAP SL 2.4+でパワー計測を行う。フリー側のスポークは結線で剛性を確保する。

 

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photo2-4:チェーンリングは問題克服中のRIDEA。

 

 

 

3_検証

3-1_気象条件

天候/曇り時々晴れ

気温/24°

湿度/67%

風速/下り区間:向い風2m/s、登り区間:追い風2m/s

気圧/990hpa

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fig3-1:気象庁発表の観測データ。アルティメットのスタートは12時。

  

3-2_走行データ

3-2-1_出力

 

 

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fig3-2:実測値と想定値の出力対比

 

 

 

3-2-2_タイム

○想定タイム

下り区間/3’19″(加減速分10秒含む)

登り区間/6’55″(加減速分10秒含む)

 

○実測タイム

下り区間/3’37″(1周目)、3’24″(2周目)、3’29″(3周目)

登り区間/6’40″(1周目)、6’46″(2周目)、6’38″(3周目)

 

 

3-2-3_速度

 

cfdata150912_1.3
fig3-3:実測値と想定値の速度対比

 

 4_所感
善くも悪くも事前の想定通りの結果となった。
自分の限界を超えられなかったことを「悪」とするか、普段の力を100%発揮できたことを「善」とするか…。
 
インターバル・インテンシティー(※)も97%止まりであったことを考えると今回の感想は前者である…。正直まだ行けた!!
 
(※)過去の時間当たりの最大パワー値に対する、対象のパワー値の割合を示し、最大パワーで走行出来た場合は100%となる。
 
 
4-1_緩斜面の登り(⑤)
他の登り区間(④および⑥)に比べ、想定出力を下回っていた。
完全に気持ちの問題で自分に負けてしまった。
 
4-2_ころがり抵抗
緩斜面区間(②および④)の舗装状態が思いのほか悪く、比較的奇麗な走行ラインはペースが速い選手の追い越し用で開けていた為、最適なラインを取れなかった。
 
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photo4-1:石畳のような舗装状態。最適な走行ラインは限られていた。
 
今回は23mmのクリンチャータイヤを選択したが、25mmワイドタイヤの方が多少重量増になっても総合では良かったかもしれない。ラテックスチューブ使用時を含めたタイヤのころがり抵抗に関しては今後の課題となった。
 
4-3_下り区間の速度(①および③)
当日の気象条件の影響で、下り区間では想定速度より約5km/h足りなかった。
 
スタート時刻近くに一時風速が強くなり、コース方向と観測データより下り区間では2m/s程度の向い風であったと仮定できる。 
 
また、前々日まで続いた大雨を伴った台風から天候が一転し、大会当日は高気圧に覆われた晴天となった。気圧の影響で空気密度が高くなったため、空気抵抗が想定より増加しとことが原因である。
 
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photo4-2:上空には巻積雲がひろがる。翌日にはまた天候が崩れた。
 
4-4_エアロ効果の分岐点
上記fig2より下り区間(①及び③)では、ほとんどペダルを漕いでいなかったことを勘案すると、条件次第ではペダルを漕ぐよりもエアロポジションを重視した方が良い事になる。
 
例えば、今回の下り区間ではDHポジションのまま、なるべく頭を下げ膝を閉じた姿勢を用いたが、この場合の空気抵抗係数を算出すると
 

速度/60km/h(区間③より)

 ■登坂抵抗(N)=-40.87=-681.2W(60km/h)

F(N)=Wsinθ

F(N)=69.5*9.8*0.06 

■転がり抵抗・駆動抵抗=50W 

■空気抵抗(N)=631W=37.86

 

Cd*A=Fd*2/ρ*V2

Cd=?????:抗力係数

A=?????:前面投影面積(m2)

空力の目安として一般的なCdA値(空気抵抗係数)を用いる。

Fd=37.86:抵抗(N)

ρ=1.153:空気密度(kg/m3)

上記気象条件より算出した。

V=17.22:速度(m/s)

 

以上を計算すると

CdA≒0.221

 

以下、有名プロ選手の空気抵抗係数の推測値

クリス・フルーム(186cm/68kg)/0.237

ファビアン・カンチェラーラ(186cm/82kg)/0.251

トニー・マルティン(186cm/75kg)/0.244

リッチー・ポート(172cm/62kg)/0.218

リーバ・ライプハイマー(170cm/60kg)/0.214

 

 

他のレースなどでも下り区間で中途半端にペダルを漕ぐ(※)よりエアロポジションに徹した方が良い場合がある為、ペダリングをせずに最大限エアロポジションを取った場合とドロップポジションでペダリングをした場合の勾配毎の速度差を算出してみると

※ドルップハンドルでの空気抵抗係数→【空力徹底】タイムトライアルジャパン第二戦

 

 

fig4-1:勾配毎の速度対比

 

 勾配3%程度ではペダルを漕いだ方が10km/h程度速いが、勾配7%で速度が逆転するため、それ以上の勾配では中途半端にペダリングするよりエアロポジションを重視した方が良い結果(※)となる。

 

※上記条件は私個人に最適化されており、体格、機材、出力が違う場合は該当しません。

 

 

4-3_3.11震災の記憶

駐車場として利用した広場の片隅には原発事故の除染残土が静かに積まれていた。

 

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photo4-3:北関東に大雨をもたらした台風の影響で残土が流出した地域もあったらしい。

 

西郷地域では除染作業が今も行われており、住宅街にも「除染作業中」のノボリが数多く立っていた。

最近は報道などでも取り上げられる機会が少なくなり、少なからず「過去のこと」「関係のないこと」と感じていた事は否めない。

原発反対などと言うつもりはないが「忘れること」「無関心なこと」こそが最も危惧すべきことである。

 
 
 
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