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スポーツバイクにギアが沢山ついているのは何故?(ギア比や速度、ケイデンスのお話)
by: 今井 明

スポーツバイクにはシングルスピード(ピスト)を除くと基本的に変速機がついていて走行中にギアが選べる構造になっています。
物によって違いますが16段や24段などのギアがついています。
初めての方には「そんなに沢山必要なの?」と言われる事もありますが、速度や路面の変化に対応出来るように装備されているので、使える幅が広いほど色々な走り方が出来るようになります。

少し難しい話になりますが、ギアや乗り方でどのぐらいのスピードが出るか?
逆に言うとスピードを出すためにはどんなギアだったりケイデンス(脚の回転数)が必要かというお話をしてみたいと思います。

 

ギア比

 

一般的なチェーン駆動の場合、クランクについたフロントチェーンリング(フロントギア)と

 

 ギア比

 

リアホイールについたカセットスプロケット(リアギア)

 

 ギア比

 

をチェーンでつないでリアホイールを駆動して回転させます。
この時、フロントギアについている歯数とリアギアで選択されている歯数の差がギア比となり、フロントギア(クランク、つまり脚)が一回転する間にリアギア(ホイール)が何回転するかという話になります。
例えばフロントが44T(Tは歯の数)、リア11Tだとしたらギア比4.0となり脚一回転でホイールが4回転する計算になります。

ギアを変えないまま速度を上げようとしたら、脚の回転数(ケイデンス)を上げる必要があります。
ただ、人間の体は一定速度で運動した方が疲労が少なく長時間運動しやすくなるように出来ています。
ランニングでダッシュを繰り返すとすぐに疲れてしまいますが、一定ペースだと比較的楽に走れる感覚でしょうか。

速度の変化に対してケイデンス変化で対応しようとすると疲れてしまうので、人間はなるべく一定速度の運動でギア比を変える事で長時間、長距離の走行を可能にするために多くの段数が装備されているのがスポーツバイクです。

 小難しい話になりましたが、ギアを変えて走るとエンジンである人間の燃費が良くなって楽が出来る、というお話です。

 

速度とタイヤ幅について

 

タイヤの内径が同じ規格ならば、タイヤ幅が広い方が基本的に円周が長くなります。
同じ回転数でタイヤを回せたとしたら、幅が広いタイヤの方が速度は速くなります。

700x25c

 ギア比

700x35c

 ギア比

 

計算値になりますが、例えば700x25Cだと円周2,146mmですが700x35cでは2,168mmと22mmも大きくなります。
ただ、その分重量は増し路面抵抗も大きくなりやすくなるので実速度に対してどちらが有利かは難しいところです。
周長が短くても単位時間当たりに回せる回転数が増やせれば速度は上げられるからです。
この辺りは脚を速く回転させる方が得意か、重いギアを踏み込む方が得意かなどによっても変わってきます。

 

 ギアと速度について

 

今回は街中での速度を例にとってご案内したいと思います。
数値はあくまで平均値だったり理論値ですので参考程度にして頂ければと思います。

 

クロスバイクですと、平坦な道では大体時速20-25km前後で走っている事が多いようです。
ちょっと速度が出せるところで時速30kmぐらいというところでしょうか。

ケイデンス(脚の回転数)は初心者の方ですと大体60ぐらいになるようです。

有名なところで、CANNONDALEのQUICK4というモデルを例にとりますと

 

 ギア比

 

フロントギアは1枚(シングル)で38T

 

 ギア比

 

リアは9速で11-42T(11 13 15 18 21 24 28 34 42)という組み合わせになります。
前述したケイデンス60で走ると、トップギアで時速約27km、3枚目の15で時速約20kmとなりますので平坦をゆっくり走る場合は重い方3枚を使って走る事になります。
ちなみに一番軽い42だと時速約6.6kmなので、きつい坂でも降りずに走れるぐらいのギアになります。

同じギア比のまま速度を出すためには、ケイデンスを上げる必要があります。
仮にケイデンスを10上げて70回転回せたとしたら、トップギアでは時速約31.5kmとなり道によっては制限速度にかかるぐらいの速度が出せます。
また、このケイデンスで時速20kmですとリア18相当になりますので、理論上普段使えるギアが1枚増えるイメージになります。
18より軽いギアは歯数が飛び飛びになるので、1段変わるごとの速度かケイデンス変化が大きくなります。
体感的なイメージで言うと、ギアを変えると急に軽くなってスカスカ回るか、急に重くなって踏み込まないといけなくなるような感じです。

 

これに対して1グレード上のモデル、QUICK3では

 

 ギア比

 

フロントギアが2枚(ダブル)で48-32T

 

 ギア比

 

リアは同じ9速ですが11-34T(11 12 14 16 18 21 24 28 34)というより細かい調整が出来る組み合わせになっています。
これを先程と同じようにケイデンス60で走ったとすると48-11Tのトップギアでは時速約34km、48-18Tで時速約20.8kmとなり平坦な道でトップ5枚ぐらいが使えて最高速も十分出せるギア比となる事がわかります。
1段ごとの速度差が小さくなるので、急激なケイデンスやトルクの変化が少なく身体への負担が軽減出来ます。
ちなみにフロント側の軽いギア32Tで、リア34Tにするとケイデンス60で時速約7.3kmとなりこちらも坂への対応力は充分です。

参考までにケイデンス70で走れたとしたら48-11Tのトップギアで時速約39.7kmと相当な速度を出す事が可能。
リアギア21Tで時速約20.8kmとなるのでリア6枚使えるようになるのでより使えるギア幅が広がります。

ご自身が欲しい速度や使い方によって、必要なギアがついたモデルを選ぶようにすると良いでしょう。

 

・ヒルクライムでのギア比

 

上り坂ではケイデンスが維持出来るかどうかが重要になります。
坂に負けずに速度を維持するためには常に加速しなければならず、そのためには脚を回し続けなければいけません。
裏を返せば、出せる速度に合わせたギアを選択する事が重要になってきます。

ヒルクライムでは、まずはコースで一番きつい斜度の部分をクリア出来るかどうかがカギになります。
例えば有名なMt.fujiヒルクライムのコース、スバルラインだと最大斜度7.8%、平均5.2%、距離24kmとなります。
最近のロードバイクの標準ですとフロント50-34Tとなりますので、ケイデンス70で34T-30Tの組み合わせで時速約10kmで走れる計算になります。

一つの目標と言われるブロンズタイム90分とすると、単純計算で時速16kmで走る事になります。
シマノ11Sで11-30Tのスプロケだと組み合わせは11 12 13 14 15 17 19 21 24 27 30になりますので真ん中あたりの34-19Tで平均時速15.8kmとなります。
緩い箇所も多いのでこれでも何とか走れるでしょう。
ケイデンスを10上げて80維持出来たとしたら21Tのギアを使えるようになってより速度変化に対応しやすくなり体力が温存出来るので、ヒルクライムでは特にケイデンスが重要になります。
勾配や風の影響などを考えると、総合してどれだけのパワーを使っているかわかるパワーメーターで出力を観察した方がタイム短縮やトレーニングには有効ですが、高価なパーツになりますのでまずは速度やケイデンス、ギアを意識して走ってみると良いと思います。

 

グラベルロードのギア

 

グラベルロードにも様々なタイプがありますので、そのモデルがどういう走りを目的としているかによってギアの設定も変わってきます。

 

 ギア比

 

 

基本的に舗装路を走行して、ある程度速度を出して軽快に長距離をツーリングしたい場合にはフロントダブルでロードバイクと同じ50-34T、リアに少しワイドで11-34Tぐらいのギアが選択されている場合が多いです。

 

 ギア比

 

重い荷物を積んでのキャンプツーリングなどを想定している場合には、平均時速がゆっくりになるのでそこに合わせたギアが選択されています。
フロントギアですと48-32Tや46-30Tなどがチョイスされる事が多いです。
長時間長距離を走るためには体力の温存が必要なので、速度よりも楽に走れる事を主眼に考えてセッティングされています。

 

 ギア比

 

グラベルロードでフロントシングルが選択されている場合にはいくつか理由が考えられます。
一つには、リアをワイドとする事で必要な速度には十分なギアが備えられている場合。
コストを考えてこの選択をされているモデルもあります。

 

また、変速機構がシンプルになるので軽量化のために敢えてフロントシングルが選択されているケース、チェーンがフロント変速時に外れるリスクや故障のリスクを考えてフロントシングルとなっているモデルもあります。
この辺りはお客様が何を重要視されるかによって選択されると良いでしょう。

 

まとまりが悪くなりましたが、ギアと速度、乗り方についての基本的な考え方になります。
どこを、どのように、どのぐらいの速度で走りたいかによって選択するものになりますので参考になれば幸いです。
もしカスタムなどをされる場合はスタッフまでご相談下さい。

 

 

 

 

 

 

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