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傑作アルミフレームを復活させる。”CANNONDALE CAAD9″最後のHAND MADE IN USA
by: 木立春之介

こんにちは。作業担当です。
普段はお客様からご依頼いただいた修理やカスタムを承っております。
今日はそんな日々のカスタムや修理の中から私の琴線に触れる一台を担当させていただきましたので、ご紹介させていただきます。
まずはブログの掲載にご協力いただきましたオーナー様に感謝申し上げます。

CANNONDALE  CAAD9

みんな大好きCAADシリーズ
どの時代においても高性能アルミロードのベンチマーク的な存在だと思っています。
そんなCAADシリーズの中でも最後のアメリカ生産モデルだったのが、今回お預かりしているCAAD9。現行モデルではCAAD13までモデルチェンジが進んでおり、なんだかiPhoneのようになってきましたが、CAAD9が現役だった頃から考えるとブレーキはディスクに、ホイールはスルーアクスルに、タイヤはチューブレスが普及して太くなり、ワイヤーはフレームの中を通ったりと、ロードバイクも大分様変わりしたことを実感させられます。
今となってはCAAD9も少し前の世代のバイクに見えてくるようにはなりましたが、ひとたびペダルを踏みこんでやれば己の体力と引き換えに小気味のいいパリッとした加速でもって乗り手に答えてくれるわけです。これが実に楽しくてついついフレームに踏まされるわけですが、気が付くと足が小鹿になっているという正に悪魔との契約。
私の知っているところで言えば、もっと前のCAAD4なんかもこれに似た感覚がありまして、面白いことにCAAD10まではそのDNAを感じることができます。こうなってくるとCAAD4の前のR4000 CAD3も同じような加速をするんじゃないかと考えているんですがどうなんでしょう。たまたまこの記事を読んでいるコアなCAADファンの皆様でご存じの方はいらっしゃれば教えていただきたいですね。

今回のご依頼

CAAD9の最終モデルが2010年であることを考えると、少なくとも組まれてから15年以上は経過していることになります。このあたりの年式のバイクで最近よく見かける不具合がSTIの空振り症状。RD側だとギアを重くする動作の際にシフトレバーが空振りしてしまい変速出来ない症状なのですが、冬場になるとグリスが固くなるせいなのか、この修理のお問い合わせをよくいただきます。こちらの個体もまさに同じ症状でご来店され、シフトレバー操作をするとそのまま元の位置に戻らなくなるほどまで頑張った個体でした。お客様とご相談の結果、さすがにこの年式の補修部品は入手が難しいということと、今後も長くこの自転車を楽しむことを考えると、まだリムブレーキのコンポーネントが選択しやすい今のうちにコンポーネントを一新する方向で進めることとなりました。

流石は名車、フレームだけでも美しい

まずは交換する部品を全て取り払ってフレームだけにしていきます。やっぱりフレームだけの状態になった自転車の姿は美しく、個人的にはこの工程が一番やっていて楽しいです。
パーツを取り外すためにバイクを作業台に固定しようと思いトップチューブを持った瞬間に思わずニヤリとしてしまいます。手のひらに伝わってくる感触から明らかにトップチューブのパイプが薄いのが分かるんですね。CAADと言えばこの大口径の肉薄パイプ。お客様のバイクでしたのでさすがやりませんが、親指でトップチューブの中心の方を押し込んだら、ちょっと凹みそうな雰囲気があるくらいに攻めたパイプ厚なのを感じられました。

この辺の年式のバイクは仕事で良く目にしてきたのもあってか、横から眺めてると妙な安心感を感じます。今となってはCAAD9もCAAD10もすっかり街中で見なくなってきました。貴重なフレームになり始めているからこそ、今回のようなメンテナンスに携わらせていただけることに有難さを感じますね。

せっかくフレームだけの状態となりましたので、軽くお掃除してから組み付けていきます。

出来上がったものがコチラとなります。

工程をだいぶ端折りましたが完成。
さすがは大口径アルミフレームなだけあって、ここ最近の太めのヌルっとしたエアロな造形のクランクにフレームが負けていないと感じるのですがいかがでしょう。
「ちょっとばかしクランク剛性上げてきたぜ!
ドラッグマシンよろしく怒涛の加速をお見舞いしてやるぜ!」
っと聞こえてきました。(脳内妄想)

変速は3世代ほどジャンプアップ。5600からR7000になり、2×10から2×11へ。今回はホイールの再利用を希望されていたので、現状お使いの10sフリーボディのままで使用できるスプロケットの11-34Tのスプロケットを選択しました。そのためリアディレイラーのゲージの長さはGSを選択。将来的に11sフリーボディのホイールに交換された際は、現状の仕様でしたら11-28Tまでは取り付けができます。


バーテープは”CICLOVATION Poly Touch Cosmic Haze”
トップチューブに鎮座するHAND MADE IN USAの星達と、この宇宙的なカラーリングとの相性が素敵ポイント。

 

個人的にはこのアングルが好みです。砂時計のような造形のアワーグラスシートステーがとにかく美しい。この美しさ、PINARELLOのONDAフォークにも引けを取らないと思ってます。

いかがでしたでしょうか。
元々CAADシリーズ自体は好きなシリーズなだけあって、お仕事ではありましたが楽しく作業をさせていただきました。
これから先あとどれくらいHAND MADE IN USAの文字に出会えるのかと少し寂しくなることもありますが、こうしてまた名車を元気に走る様にできたことはやっぱり嬉しいものです。今回も素敵な自転車に出会えたことに感謝致します。

 

最後に、この素敵な写真達の提供はスタッフ下山田でした。

 

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