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【雑記回Vol.2】自転車メカニックになることを目指す方へ
by: 山下雄三

まいど、福岡天神の山下です。

先日、【自転車業界で働く事を考えている方へ】と題したブログを書かせて頂きました。

今回はさらに細かく、自転車メカニックに特化したものをお伝えしたいと思います。
(例によって長文です)

自転車メカニックとは何か

一般的に自転車メカニックは、メーカーから入荷した新車を組み上げる・故障車体の修理メンテナンス・車体のパーツ交換などによるアップグレード作業…他にも色々ありますが、まずは簡単に思いつく業務内容としてはこの辺りではないでしょうか。

その昔、「自転車ショップのメカニックなんて、そこにある自転車を形にするだけ(元々ある物をいじるだけ)だからクリエイティブな職業じゃない」なんて意味合いの言葉を受けたことがありますが、仰るとおりです。
ゼロから何かを生み出すことが出来る人ってすごいと思います。
私には絶対に出来ないことなので、純粋に尊敬します。

IMG_6856ただ、「自転車メカニックだからこそ」と言えることだってあります。

自転車メカニックとして気を付けていること・心構え

前述のとおり、自転車メカニックは元々あるものを組み上げたり、維持管理したり、というのが仕事です。
当然適当にやっているわけはなく、そこには経験や勘も必要ですが、決してそういった言語化されにくいものだけでなく、セオリーやマニュアル、ルールが存在し、それに則って作業をしています。

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これはごく一部ですが、このように膨大な資料マニュアルが存在し、しっかり中身を確認しながら作業を実施します。

新車を組み上げる時もそう、何かのパーツを取り付ける・交換する時もそう、選択や作業方法などを間違えると重大な事故になり得る可能性だってあります。
前回のブログにて少しだけ触れましたが、メカニックには「一歩立ち止まって確認する臆病さ」が必要なのです。

また、新車だろうと持ち込まれた車体だろうと、隅々までしっかりと確認する目が必要です。
その場で問題が発生している場合や、今後発生するかもしれない不具合の可能性を見抜く目と注意深さ。
これも求められます。
壊れてしまう前に、乗車している時に不具合が出る前に、先回りして対処できればそれが一番ですから。

これは持論ですが、「しっかりマニュアルを確認しながら組み立てれば、その自転車の70点の完成度は出せます」。
70点と聞くと、なんだ及第点じゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
では、その70点でもう納車していいのかと言えば、それは当然NOです。

残り30点を埋めるためには、経験や勘、それを身に着けるための日頃からの研鑽が絶対必須となります。
そして「このくらいでいいや」という考えを徹底的に排除することが同じく絶対必須です。

セルフメンテナンスをやっている方へ

と、見出しに書きましたが、私は決してセルフメンテナンスを忌避してはいません。
むしろ、可能な範囲で実施することを推奨しています。

自転車屋が目指す究極の理想は、「全てのユーザーが自分が所有する自転車のメンテナンスを自分で実施できる状態を作ること」だと考えています。
だったらお前の仕事無くなるじゃんというツッコミは聞こえません(笑)。

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昨今、本当に数少ない事例ではありますが、「メーカーが推奨していない方法・正しくない方法、要するに説明書やマニュアルを読んでいない」ことなどに起因する自転車本体や各種パーツの破損、そしてそれが原因となり得る事故寸前のトラブルを目の当たりにすることがあります。
自転車パーツは多岐に渡り、その入手方法も増えています。
それはそれで素晴らしいことだと思います。

私も同僚メカニックスタッフも、
「このパーツとあのパーツとを組み合わせたらどうなるだろう」
「この車体(パーツ)のポテンシャルを最大限引っ張り出すためにはどうすればいいだろう」
などとイメージを深くし意見を戦わせ、思いを馳せます。

「自転車選び、パーツ選びは知的なゲームである」と評した著名な評論家の方がいらっしゃいますが、当時それを読んだ私は目から鱗が落ちました。

ただし、それは用法容量を正しく守っているからこそ。
自転車を破損させる可能性がある、または身を危険に晒すようなパーツ交換や改造はくれぐれも避けたいものです。

まとめ

白状しますと、実は今回のブログは書く予定がありませんでした。
内容の特性上、あまりくどくど書くのもどうなのかと思っていました。

書くきっかけになったのは、福岡天神店の同僚から「続き書いてよ、読みたい」と言われたからです。
(そんなん業務中に俺から聞いたらええやんと思ったのは秘密)

今回のお題でお伝えしたい事のいくつかは書くことが出来ました。
ただ、それもほんの一部。
自転車メカニックの世界は、あなたの想像の及ばないくらいに広く深い。

そんな深淵に、お客様の安心安全を全身に背負いながら飛び込める方、お待ちしております(笑)