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【空力徹底】NISHIGOバイシクルフェス個人タイムトライアルに挑戦③
by: 佐野 隆

 

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過去ブログはこちら→【空力徹底】NISHIGOバイシクルフェス個人タイムトライアルに挑戦①

過去ブログはこちら→【空力徹底】NISHIGOバイシクルフェス個人タイムトライアルに挑戦②

 

 

NISHIGOブログ第三回目の今回は、使用機材とフレームの空力特徴についてご紹介します。

 

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photo:7月に行われた加須TTの様子(引用元http://www.saitama-cf.com/album/index.html)

 

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photo:その独特なデザインに一目惚れ。また理想に近い空力特性も持つ心強い相棒である。

 

◯仕様

フレーム/CANNONDALE SLICE RS

ステム/CANNONDALE SLICE RS ORIGNAL

ハンドルバー/PROFILE DESIGIN

エアロバー/PROFILE DESIGIN T2CARBON

ブレーキ本体/CANNONDALE SLICE RS ORIGNAL

ブレーキレバー/3TAERO

シフトレバー/SHIMANO SW-9071

Fディレイラー/SHIMANO FD-6770

Rディレイラー/SHIMANO RD-6770SS

スプロケット/SHIMANO CS-7900 12-23T

チェーン/SHIMANO CN-7901

チェーンリング/ROTOR NO-Q AERO 52-38T

クランク/ROTOR FLOW 170mm

ボトムブラケット/ORIGINAL STEEL

ペダル/SPEEDPLAY ZERO STEEL

ホイール/REYNOLDS 72 CLINCHER

タイヤ/SCHWALBE IRONMAN 24C

チューブ/PANA R-AIR

サドル/SANMARCO

シートポスト/CANNONDALE SLICE RS ORIGNAL

パワーメーター/ROWER2MAX TYPE-S

重量/8.60kg

 

 

◯フレームの空力

まず、競技に使用できる機材はUCI車両規定にて厳格に定められている。(トライアスロンやUCI認定外のレースは別)

その中でフレームの空力に関する項目は以下の通り

 

条項1.3.024

保護スクリーンおよび流線形の胴などの空気抵抗を減少させるか又は推力を増す目的または効果のあるいかなる装備の追加または組み込みを禁止する。

保護スクリーンとは風の抵抗を減らすように設計された、固定の風防装置である。

胴形は断面を後方に伸ばすかまたは流線形にするものである。長さと直径の比が3:1以下なら許容する。

 

自転車以外のスポーツ競技でも規定の内容は曖昧な部分があり、各メーカーのエンジニアはその解釈を巡って凌ぎを削っている。

 

まず、フレームの空力を語る上では先端と後端の形状が重要で、中央部はライダーの体やペダリングによる影響があるため、現状のテクノロジーではメーカーが謳っている様なエアロ効果が発揮されない。

 


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img:走行中のストリームラインの様子(引用元http://velocitysportscycling.com/bike-fit-improves-performance)

 

①先端部

レースカーなどに用いられているフィンやウィング状のものは「固定の防風装置」と見なされ採用出来ない為、フレーム構造の一部と見なされる形状の範囲中で、以下の点が考慮されているものが良い。

 

①ホイールやライダーを含めたバイク全体の空気の流れを考えているもの。

②フレーム自体の空気抵抗を減らすため小さく薄いもの。

 

 

 

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img:イラストにした空気の動き(引用元http://www.totalsimulation.co.uk/wp/portfolio/britishcycling/)

 
 
②後端部
ライダーやホイールが乱した空気の流れを整流し、乱流の発生を抑える効果があること。

バイクの前面には空気の壁(圧力が高い)がある。一方、後方には空気流れがせき止められた(圧力が低い)部分が存在し、この圧力差が空気抵抗として現れる。

 

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photo:1995年にレースで使用されたコルナゴC42だが、後に違反となった(引用元http://www.bdc-forum.it/showthread.php?p=4648320)

 

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photo:同時期にツールで使用されたバイク。フィン部分は後から張り合わせているだけだが、空力効果は大きかった。(引用元http://www.bdc-forum.it/showthread.php?p=4648320)

 

 

③表面

さらにフレーム全体を通して、余計な凹凸や段差が少ないもの。

自転車の空気抵抗は上記のフレーム前後に作用する圧力抵抗と平行に作用する摩擦抵抗で説明できる。

空気の流れがスムーズな層流の場合であっても摩擦応力は存在するが、凹凸や段差などによって乱流を生じるとより摩擦抵抗は増加する。

 

凹凸や段差等は、乱流の境界層を発生させ圧力抵抗の原因となる剥離現象を軽減させる(ボルテックスジェネレーター)効果があるが、一定の条件下以外では空気抵抗を増加させると考え良い。

 

 

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photo:KOOFU WG-1ヘルメット。赤丸の突起物が意図的に乱流を発生させる。

  

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photo:ZIPPホイールなどに用いられているディンプル加工はその代表例

 

 

ちなみに

表面の最適化については水も空気と同じ流体なので、水中を高速で移動する生物も空力の参考となる。

例えばイルカなどは体表面が特殊な粘膜で覆われており驚異的に水の抵抗を減らしており、自転車の表面処理や塗装にも応用出来る可能性もある。

 

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photo:(引用元http://www.yutorilife.com/photo/images/seibutu079.jpg)

 

 


 

 

上記「フレームの空力」を踏まえた上で、これより「スライスRS」の特徴をご説明します。

 

◯ヘッドチューブ(HEAD TUBE)

 

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圧力抵抗軽減の観点とは別に、空気抵抗は前面投影面積にも比例関係にある為、非常に薄くコンパクトなデザインとなっている。フロントフォークは上下から支えるデュアルクラウン仕様とし、驚異的に細いヘッドチューブが極限まで空気抵抗を軽減すると同時に、剛性を高めることで精度の高いハンドリングを実現している。

 

 

◯ダウンチューブ(DOWN TUBE)

 

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ダウンチューブは典型的な翼断面を採用し、ボトルケージを取付けるダボ穴さえもない。

風向きに迎え角が強い場合は、流れの剥離が発生し、空気抵抗の増加と車両の挙動が不安定になるが、多くの条件下では最も抵抗が少ない理想的な形状である。

 

 

◯フレーム後端形状(REAR END SHAPE)

 

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スライスRSの一番の特徴といって良いのは、独特のフレーム後端の三角形状。フレーム最後端のフィン状のデザインはフレームやライダーのペダリングにより乱れた空気の流れを整流する効果が大きい。

 

一般的なエアロフレームは翼断面のフレームとピラー形状を用いているが、ヨーアングル(横風)が増加すると風下側にドラッグを発生させ整流効果が失われると共に空気抵抗が増加する。

 

 

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この解決策として後端を切り落としたカムテール構造が採用される場合もあるが、翼断面にくらべ整流効果が劣る。

整流効果と横風に強いのがこの三角翼であり最後端の頂点部では横風時でもドラッグが発生しない。

 

 

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photo:(引用元http://free-photos.gatag.net/2014/09/21/140000.html)

 

気流が安定しない海岸に生息するアホウドリなど海鳥の翼は先端が細くなっているが、これはポンテッドウイングと言い、点になっている翼端では流れの迎角が大きくなっても空気の乱れがない特徴がある。

 

 

◯トップチューブとピラー(TOP TUBE AND PILLAR)

 

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トップチューブと高さが揃えられたステム構造、トップチューブからの流れを妨げない史上もっとも薄型のUCI適合のシートポスト、さらに後方に伸びた三角翼による高い整流効果を発揮する。

 

エアロバーの隙間から流入した空気が勢いを保ちつつエネルギーを失わないまま、フレームの後端に抜ける構造のため、ライダーの懐に巻き込んだ空気をこの勢いを保った流れによってフレーム後方に引く抜く効果があり、他のフレームより特筆した空力特性を発揮している。

 

 

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img:走行時の空気の流れをシュミレーションしたのもの(引用元http://www.cervelo.com)

 

寒色なっているステム後方とピラー後方は空気の勢い(エネルギー)が失われて流れが澱んでいる部分。上記は上記イメージはサーヴェロP5のものだが一般的な多くのフレームも同様の結果となる。

 

 

◯シートチューブトンネル(SEAT TUBE TUNNEL)

 

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スライスRSのシートチューブには、タイヤに伴った空気を通すトンネル状の溝が採用されている。

 

流れの中にある物体の表面には常に速度差ゼロの空気層伴っているが、ホイール上半分は進行方向とは逆に回転しており、相対速度は走行速度の2倍になるため空気が乱され抵抗が発生している。

 

 

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img:リドレーに採用されているスリットはスポークに伴った空気に対して効果がある。

 

 

◯空力データ(AERODYNAMICS DATA)

 

注意すべき点は、ほとんどのメーカー公表値は自社製品のデータが優秀な場合に限られている。ホイール、ライダーの有無などの組合せや速度、気温などの条件が変化すると流体である空気は生き物の様に流れを変え、空気抵抗のデータも全く違うものになってしまう。各種公表されている空力データを比較する場合は、自分が求めている条件下のデータを優先させる事がポイントとなる。

 

 

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fig:GIANT公表の空力データ(速度:40KPH/ライダー条件:不明/ホイール条件:不明)
 
 
 
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fig:空力データ(速度:不明/ライダー条件:なし/ホイール条件:ZIPP404)(引用元http://aerogeeks.com/2013/09/24/2014-felt-ar-wind-tunnel-data-analysis/)

 

 

次回ホイール&その他パーツの空力徹底へつづく…。