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意外と知らない⁉ ハブの構造や必要なメンテを徹底解説‼ 作業内容も大公開‼
by: 関 和貴

皆さんこんにちは、ワイズロードお茶の水店、関です。

 

今回はホイールのメンテナンスやカスタムについて掘り下げたいと思います。

中でも今回は特にハブの構造や必要なメンテナンスを詳しく紹介します。

 

 

ハブの仕組み

車輪の中心部分、ハブ。

自転車の回転パーツの中で特に重要な部分であり、良くも悪くも駆動抵抗に大きく関係する繊細なパーツでありながら、体重や段差の衝撃も受けるし、汗や雨の侵入にも耐えなければいけないので、定期的なメンテが必要になります。

 

 

プレゼンテーション1

ホイールの構造はモデルにより異なりますが、これが一般的な後輪の構造です。

 

ハブ本体、「ハブボディー」内部には回転性能の肝、ベアリングが入っていて、中心にシャフトが通っています。

後輪の場合はスプロケットを取り付ける部分、「フリーボディー」がついていて、その中にもベアリングが入っています。

一般的なホイールは後輪4個、前輪2個のベアリングでシャフトを支えています。

 

ペダルをこいだ力はチェーン、スプロケットを介してハブ→スポーク→タイヤに伝わり、スピードになります。

ここでスプロケットからホイールに力を伝えているのが「ラチェット」。小さなパーツに大きな力がかかっています。足を止めるとカチカチいうのもこのラチェット部分です。

 

メーカーごとにハブの構造が違い、性能や防水性も異なります。

その為、それぞれのホイールにあったメンテナンス方法と時期を知っておきましょう!

 

 

主要なハブの構造

先程一般的なハブの構造をご紹介しましたが、この構造にもいくつかのタイプがあります。

このタイプを知ることで性能のメリットデメリットやメンテナンス頻度を知る事ができます。

ただし、主要なブランドやメーカーサイトで紹介されているものは内部構造がわかりますが、マイナーなモデルや安いホイールは分解してみないと構造がわからない物もたくさんあります。自分のホイールのメンテナンスがわからない方はご相談ください。

 

 

ベアリングの構造

カップアンドコーン

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ベアリングを構成する玉、玉受け、玉押しなどが別々の部品で、分解調整できるタイプです。

定期的にメンテナンスすることで長期間同じパーツを使います。

それでも玉、玉受けなどは消耗品なので傷んだら交換します。

スムーズに回転させるには製品の精度の他に作業者のテクニックも必要。

シマノ・カンパのホイールの多くに採用される他、安価なホイールでもよく見ます。

 

 

カートリッジベアリング

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サイズが規格化された汎用ベアリング。

一般的に分解清掃は不可。(防水シールが変形し性能が大きく低下する為)

消耗したら交換することで新品の性能に戻る。

ベアリングの種類によって防水性能や回転性能に差があり、同規格であればセラミックベアリングに交換もできる。

高級ホイールから安価なものまで多くのホイールで採用されています。

 

 

ベアリングの素材

スチールベアリング

一般的な素材、安価で一般的な性能。

 

(ハイブリッド)セラミックベアリング

ベアリングの玉が硬いセラミック製のベアリング。

スチールベアリングよりも回転が少し軽い。

潤滑剤が抜けると玉受けがセラミックに負けて摩耗してしまうので耐久性の高いグリスが塗られていることが多い。

カンパのUSBや比較的安価なセラミックベアリングがこのタイプ。

 

 

フルセラミックベアリング*またはそれに近い物

玉だけでなく玉受けもセラミックの物や、それに準じた耐久性のあるもの。

(実際にホイールで使う物で玉受けもセラミックの物は少なく、特殊コーティングで玉受けの強度を高めたものが多いですがここでは便宜上まとめて紹介します)

玉だけでなく玉受けも硬度の高い素材にすることで摩耗が少なく、グリスではなく抵抗の少ないオイルで潤滑することが多い。

ベアリングの回転の軽さは素材の違いよりもグリスの違いによる部分の方が大きいので、オイルで潤滑しているベアリングは回転が非常に軽い。

スチールベアリングよりも耐久性が高いことが多いですが、サビや衝撃には弱いので注意しましょう。

 

主な高性能セラミックベアリング

・カンパのCULTは特殊加工された玉受けで、オイルで潤滑。

・EnduroのZEROはマグネタイトと極低温処理を施した後、鏡面仕上げに研磨された玉受け。使用する潤滑剤は不明。約6~8000円/個

・CDJのブルーベアリングはセラミックベアリングと高強度のステンレス製の玉受けですが独自開発の回転と耐久性の高いオイルを使用し回転が非常に軽い。約7000円/個    などなど。

 

 

ラチェットの種類

爪・ポールタイプ

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フリーボディーについている爪(ポール)がハブボディーのギザギザに引っかかってかみ合う仕組み。

カンパニョーロ他多くのメーカーが採用するスタンダードな構造。

 

 

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多くの場合、爪はフリーの外側についており、分解時に清掃できる構造ですが、シマノの場合はフリーボディー内部に格納されておりメンテナンスの必要はありません。

 

 

ランニングフェイスラチェット

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スターラチェットやID360としてDT SWISSやMAVICのホイールに搭載されています。

 

 

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爪タイプは爪の先端のわずかな面積で加速力を伝達しているのに対し、ランニングフェイスラチェットはギザギザの面同士が広い面積で接するので駆動ロスが少なく、しっかりパワーを伝達できます。

 

 

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ZIIPのNSW用ハブも面で接触するラチェットを搭載。

特徴的なのが面ラチェットの反応性や剛性はそのままに、磁力やエラストマーによって空転時の抵抗を減らし、足を止めていても減速しにくい構造になっています!

 

 

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シマノの9200系デュラエースホイールに新しく採用された「ダイレクトエンゲージメント」システムも面ラチェットかつ、内側に掘られた斜めの溝によって、踏み込んだ時のみラチェットが接触する構造で、空転時の抵抗や騒音が極めて少ないシステムになっています!

 

 

メーカーごとの特徴と必要なメンテナンス

*紹介するのは一般的なモデルの例で、一部例外もあります。主観を含みます。メンテナンス頻度は目安です、使用状況により異なります、メーカーの指示に従いましょう。

 

シマノ

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主要メーカーで最も保守的で耐久性重視なのがシマノ。

ベアリングはカップアンドコーン式で分解洗浄することで長期間使用することができ、交換パーツも比較的安価。

ハブの防水性が高いうえに、粘度の高いグリスを使用するので耐久性は良好。

反面、純正状態では(グリスの粘度が高いので)回転が特別軽いわけではない。

セラミックベアリング化などはほぼ不可能だが、グリスの種類や量を工夫すれば回転を軽くすることも可能。

カップアンドコーン式なので、作業精度はメカニック次第。しっかり調整できればかなりスムーズになります!

乗る距離に応じて2~3年に一度くらいのメンテナンスを推奨します。

メンテナンスはハブの分解洗浄=ハブオーバーホールがおすすめ。フリーボディーは分解不可ですが、メンテフリーで長期間使えるます。

 

 

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メンテナンスの様子。

このホイールはリムブレーキの古いアルテグラホイール。

 

 

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グリスが古くなって変質しています。

ベアリングの玉はどこのメーカーよりもデカい!?

 

 

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フリーボディーと玉受けが一体になった構造。フリーボディーのラチェット部分はメンテできませんが、玉受け部分を掃除して新しいグリスを塗ります。

多くの場合、後輪はハブに2つ、フリーに2つで4つのベアリングを使いますが、このホイールはハブの両端の2つ+分解不可のフリーボディー内に極小のベアリングが多数入っている、という他メーカーとは大きく異なる設計です。

 

 

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今回は回転が軽くなることを狙って純正外のグリスを使ってみました。

グリスの種類や量で回転性能や耐久性を微調整することもできます。

*通常のメンテナンス時は純正グリスを使わせていただきます。グリスの在庫や保障の観点から純正外グリスをお選びいただけない場合もございます。グリスの変更は別途料金がかかる場合があります。

 

 

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カップアンドコーンタイプのハブは最後の玉当たり調整が非常に重要!

この作業の上手、下手で性能が大きく変わります。

 

このホイールは頑丈な構造なので、定期的にメンテすればかなりの長期間使えるます。

多くの場合はパーツ交換は必要ありませんが、グリス切れやガタがある状態で使っているとベアリングの玉が傷み、さらに重症だとフリーボディーやシャフトの交換が必要になることも。

 

 

カンパ・フルクラム

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ハブの回転に定評のあるカンパニョーロ。防水性も並み以上で幅広い用途で使える。

カンパ系のハブにはグレードが4種類あり、

ZONDAより下のグレードは一般的なカートリッジベアリング、

ZONDA以上のミドルグレードはカップアンドコーンのスチールベアリング、

BORAなどの上位モデルはUSBと呼ばれるカップアンドコーンのセラミックベアリング、

BORA ULTRAなどのハイエンドはCULTと呼ばれるカップアンドコーンのセラミックベアリングが採用されています。

 

純正でセラミックベアリングを採用しているのが特徴で、スチールベアリング、USBでも同価格のホイールより回転がスムーズですが、CULTベアリングは異次元の回転の軽さを誇ります!!

スチールベアリング、USBベアリングはあとからCULTベアリングにグレードアップすることも可能です。

 

防水性能は通常使用では問題ありませんが、上位グレードほど回転性能優先でグリスが少ないので水が浸入しやすいうえ、一度傷んでしまうと交換が必要になってしまうので、定期的なメンテナンスがオススメ。

特に後輪は構造的にベアリングが汚れやすいので注意。

 

メンテナンスのオススメは1~2年に一度ハブオーバーホール。たくさん乗る方は後輪だけでも毎年した方が良いかも。

パーツが傷んでなければ部品交換は必要ありませんが、フリーボディーは消耗品なので、数年に一度交換になることも。

 

 

作業の様子

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フルクラム レーゼロコンペ

レーシングゼロのCULTベアリングバージョンモデル。

 

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後輪のシャフトを抜いたところ。

フリーボディーや玉押しが真っ黒になったグリスで汚れています。

 

 

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掃除したハブボディ。

ギザギザした部分がラチェットの爪が引っかかり動力を伝達する部分。

その奥の一段細くなっている部分がベアリングが転がる玉受け部分。

ラチェットとベアリングが密接しているために、後輪右側のベアリングは汚れやすいので定期的なメンテナンスをお勧めします。

 

 

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外したベアリング。

これもグリスで汚れています。

グリスの汚れだけならいいのですが、外から侵入してきた水分や細かい砂などが混ざってしまうとベアリングが傷ついて回転が悪くなったり、サビの原因になります。

 

 

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掃除したセラミックベアリング。

さっきとは全然色が違います!

ベアリングは本当に繊細なパーツで、目に見えないくらいのキズでも性能が大きく変わってしまうので、常に清潔にする必要があり、メンテナンス時も、ベアリングを触るときは何度も手を洗って慎重に作業しています。

 

 

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他のパーツも全てピカピカに掃除します。

シマノ同様、傷んでなければ部品の交換はありませんが、写真右下の防水シールやスプリング、ブリーボディーは交換になることもあります。

組むときはお客様の用途や、汚れ具合によって部分ごとに使うグリスを変えて、耐久性と回転性能の両立を目指しています。

 

 

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ベアリングをセット。

CULTベアリングの場合グリスでなくオイルで潤滑するのでとても回転が軽いのが特徴!

スチールベアリングをオイルで潤滑すると、回転は同じくらい軽くなりますが、1日で壊れてしまうでしょう。

 

 

 

MAVIC

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*ENVEの一部モデルはMAVICのID360を採用

 

メンテナンスをこまめにしてあげた方がいいのがMAVIC。

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ホイールとしては完成度が高いですが、長期間メンテナンスしないと浸水して内部がサビてしまうことがあります。

 

MAVICに必要なメンテナンスは2種類。

1か月または1000kmを目安にラチェット部のグリスアップ

数年に一度のベアリング・フリーボディー交換

 

MAVICは少しだけ水が浸入しやすいので定期的にグリスアップをしましょう。

毎月グリスアップが必要なのがラチェット部分。慣れればご自身でもできるメンテナンスですが、パーツ壊してしまうと大変なので、不安な方は店舗にお持ちください。

その時に周辺がサビていないか確認すれば全く不安なく乗る事ができます。

 

ハブのベアリングはカートリッジベアリング式で、シマノ・カンパのように定期的に分解性能するのではなく、消耗したら新品交換するタイプ。

ベアリングが傷んでも新品に交換すれば回転性能も新品に復活するので安心してガンガン使えます。

逆に、長期間交換していないと、だんだん回転が悪くなってしまうのでたくさん乗るなら概ね2~3年での交換がオススメです。

カートリッジベアリングタイプでは純正交換ベアリングの他、より高回転のセラミックベアリングにカスタムすることも可能です。

 

 

DT SWISS

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DT SWISS製ホイールの他、ボントレガーなどいくつかのブランドもDT SWISS製ハブを使用しています。

軽量で高性能、信頼性が高く人気のブランドです。

 

基本構造はMAVICと近く、カートリッジベアリングとランニングフェイスラチェットを採用していますがMAVICほどメンテナンス頻度は高くありません。

半年~1年前後でフリーボディーのグリスアップ

2~3年前後でのベアリング交換がオススメ

*メーカーでは1年に一度のメンテナンスを推奨

 

 

 

その他ブランド

上記以外にもホイールブランドはたくさんありますが、ミドルグレード以上の物はほとんどがカートリッジベアリングのタイプなのでメンテナンス頻度はDT SWISSと同じくらいと思って大丈夫ですが、特殊なものもありますのでメーカーのHPやマニュアルで確認した方が安心です。

メンテナンスに困ったらまずはご相談ください。

 

 

メンテナンス費用

基本工賃は以下の通りです。(当店購入ホイールの場合)

 

・ハブオーバーホール(カップアンドコーン式前後輪)¥9,900~

フリーボディーが交換になる場合1万円前後追加

 

 

・ハブオーバーホール(カートリッジ式前後輪)¥9,900~+ベアリング代(¥5~8,000程度目安)

フリーボディーが交換になる場合1万円前後追加

 

・フリーボディーグリスアップ ¥3,300~

MAVIC、DT SWISS、ZIPPなどのフリーのみ簡単に外せるタイプの場合。

 

 

 

当店では経験豊富なスタッフが丁寧に作業させていただいています。

ホイール単品でのオーバーホールの他、車体と同時オーバーホールも人気です。

その他のメンテナンスや、そもそもメンテナンスが必要かどうかなど、お気軽にご相談ください!!

ご不明点、ご相談はワイズロードお茶の水店、関まで!

 

 

~~お知らせ~~

ワイズロードお茶の水店は店舗の老朽化により2025/4/18をもちまして閉店いたします。

お茶の水店のスタッフや、トライアスロン館の売り場は4/24にリニューアルオープン予定のワイズロード新橋店に移動いたします。

新橋店ではより多くの完成車・パーツに加え、お茶の水店のトライアスロン用品やメンテナンスサービスをご用意いたしますので、是非リニューアルしたワイズロード新橋店にお越しくださいませ!

(今回紹介したメンテナンスは引き続き新橋店でご提供いたします!)

移転に伴い、4月上旬以降修理受付ができない場合がございます。メンテナンス、修理はお早めにご相談ください。

長年のご愛顧、ありがとうございました。