2016/12/28 14:45
【パワートレーニング】速く、楽に!貧脚こそ効果大!【③やったこと】
by: 永平 宏行
このブログは、
中年のブランクライダーが、パワートレーニングを通して、
脚力を回復した喜びを、大した脚力でも無いのに
恥を忍んであえて綴り、パワートレーニングの素晴らしさを
他の多くのライダーにも広めようというお節介なブログです。
第1回「エビデンス」
第2回「動機」
第3回「やったこと」
第4回「パワートレーニングのメリット」
第5回「どんなパワーメーターがある?」
第6回「パワーは青天井?」
第7回「お役立ち情報」
今回は、10年の自転車ブランクを経て、体力をリカバリーし、
若いころ以上の脚力を得る為に実際何をやったか?
というお話です。
※といっても、パワトレの「真似事」なので、ホント大した事はしていません
やったことは大きく2つ。
「ベース体力のリカバリー」
と、
「脚力の向上」
を、
段階を踏んでやりました。
第1段階:体力のリカバリー
「とりあえず普通に」スポーツ自転車に乗れる体力を取り戻す段階。
「普通に運動できる」ベースがなければ、体力の強化には取り組めません。
片道20kmの通勤ライドを隔週1回から始め、
徐々に毎週1回→毎週2回→時々週3回と増やし、
強度も「くるくる」レベルから「ちょっとグイグイ」レベルまで、
徐々に上げて行きました。
この時点ではまさか自分がパワーメーターを
買うことになろうとは夢にも思いませんでした(。・w・。 )
パワトレ用語で言うなら「くるくる」=L1、
「ちょっとグイグイ」=L3、と言ったレベルです。
決して、筋肉・心肺に過度な負担を掛けず、
運動に体を慣らして行きました。
(「レベル」については、追って説明します)
無理をせず、出来るようになったら上へ、というスタンスなので、
当然、時間はかかりました。
約1年くらいでしょうか。
今では強度をコントロールすれば、毎日でも通勤OKです。
体重は16年の1月から7月までに5kg落とすことができました。
(77kg⇒72kg、まだまだ重い!)
第2段階:脚力の向上
体力のリカバリーに自信が持てて、
この調子なら、若いころとそう大差ない感じで踏めるかもな?
と感じた頃から始めたのが、本題のパワートレーニング。
職責(バイオレーサー担当)の義務感もあり、
「パワーメーターの何たるかぐらいは身をもって勉強しないと」
「フィジカル無くても、専門家としてペダリング効率ぐらいは良い値を」
という思いから、16年7月にパイオニアの
ペダリングモニターを導入した訳ですが。
義務感以上の「楽しさ」を見出して、
脚力向上にハマってしまいました。
減量は現在も進行中ですが、16年7月から12月で5kg減。
(72kg⇒67kg。 1月からトータルだと10kg減。
まだまだ重い!さらに7kgは減らしたい…)
さて、第2段階のパワトレの中身ですが、
大した事はしていません。
やったことは、思いっきりシンプルに、
「FTP※の88%~94%で20分走る」
これだけです。
しかも、ローラー環境が無いから通勤で(;^_^A
※FTP:Functional threshold power(機能的作業閾値パワー)の略。
1時間持続可能な上限のパワー値。
持久的運動能力の指標。
つまりパワトレの最重要指標。
すっごく平たく言うと、そのライダーの
戦闘能力です。
計測の際、1時間も上限一杯の運動をするのはキツイので、
普通は20分の全力走の平均パワー※×0.95で求める。
※後で述べる20分のMMPです
この数値を基準にLevel1~Level7までのトレーニングゾーンを設定し、
目的に応じた最適負荷でトレーニングをするのがパワートレーニングの基本。
以下が7つのパワーゾーン。
( )内の%は対FTP比
L1(~55%):Active Recovery 回復走
(楽である)
L2(56~75%):Endurance 耐久走
(ほどほど)
L3(76~90%):Tempo テンポ走
(ややきつい)
L4(91%~105%):Lactate Threshold 乳酸閾値
(きつい)
L5(105~120%):VO2max 最大酸素摂取量
(かなりきつい)
L6(121~150%):Anaerobic Capacity 無酸素運動容量
(非常にきつい)
L7(151%~):Neuromuscular 神経筋パワー
(最大限)
全部のゾーンを暗記なんて出来ないので(FTP変われば変動するし)、
ゾーンの一覧表を作って、ラミネートしてステムに貼り付けています。
こちらのじてトレさんの記事でウェブ上で計算することもできます。
今回のパワートレーニングの目的はシンプルで、
「目的:速くなりたい(巡航速度を上げたい)」
これだけ。
当面レースに出るわけでもなし。
仮に出てもマスドスタートのロードレースには出ない。
だから鬼スプリントや、恐怖の無酸素領域インターバルは必要なし。
ロングライドをファストランペースで、気持ちよく走り、登る。
そのためには、巡航速度を上げるのが最良の改善策。
そして、巡航速度を上げる為には、
「目標:FTPを上げる」
「手段:FTPの88%~94%で走る」
というシンプルなことだったのです。
では何故、FTPが上がると、巡航速度が上がるのか?
それは、FTPが持久的運動能力の指標だからです。
正しくは、持久的な運動能力が上がった結果、
指標であるFTPが上がる、ですね。
以前と同じ生理的負荷で、出せる出力が上がれば、
巡航速度が上がる、という事です。
体重、機材、スキルが全く同じライダーが二人いたとしましょう。
ライダーAは、FTPが300W、ライダーBはFTPが200W。
この二人が各々、FTPの60%=L2:耐久走レベルの
同じ運動強度で走っても、計算上、
ライダーAは、時速35kmの巡航が出来るのに、
ライダーBは、時速30kmの巡航しか出来ません。
これが「同じ運動強度で出せる出力が高い・低い」例です。
(体重60kg、装備重量9.9kgの設定にて、こちらのサイトで計算)
ライダーAのFTPの60%(L2:耐久走)は180W、
ライダーBのFTPの60%は120W。
パワー以外のすべての条件が同じなら、FTPが高い方が、
ラクをしながら、より速度が出せる訳です。
次はAとBが同じ速度を出すシチュエーションを想定してみましょう。
ライダーAは180Wで、鼻歌交じりのL2レベルで
時速35kmの巡航ができる時、
ライダーBは180Wで、ゼイゼイハーハーしながらのL4レベルじゃないと、
時速35kmの巡航が維持できません。
体重等の条件が一緒なので、
同じ速度で走ろうとしたら
同じパワーを出す必要があるが、
そのパワーを出すのに必要な生理的負荷が
AとBでは大きく違うという事ですね。
このように、巡航速度を上げるのに効果が高いのがFTPの向上。
そして、その方法は、FTPの88%~94%で一定時間走る事※、なのです。
※いわゆるSST:sweet spot trainingです。
FTPが最も効率よく向上するトレーニング。
7つのLevelには規定されないが、重要なゾーン。
メニューは20分×2セット(間にL1でレスト10分)を週2回とかが標準的。
前後にL1でウォームアップとクールダウン各10分も忘れずに。
20分×2回がキツければ、10分3回とか、15分2回とか、強度を変えずに、
時間と回数を変えて、徐々に慣らして行っても良い、とされています。
FTPは、つらいながらも、
仮にも「1時間持続できる運動強度」です。
その約5%~10%減のSSTなら、
キツイながらも継続出来ない運動じゃない。
無酸素域のインターバルの方がよっぽどキツイ!
幸か不幸か、ローラー環境が無いので、
実走(通勤)で定期的に週2ペースで、
20分×1回のSSTトレーニングを行いました。
(L1で10分アップ、20分SST、L1で10分クールダウン、計正味40分)
もちろん、実走なので信号待ちや、ペース維持のしづらさもあり、
ローラーよりも効率は悪かったかもしれません。
(しかもインターバル1回だし…)
実走の平均パワー値は、信号待ちで止まったり、
車の加減速にペースを合わせて空走したりするので、
どうしても低い値が出がちです。
そこで、参考にするのが
NP(Normalized Power)
です。
「本来はこのぐらいの強度で運動してたんじゃない?」
というパワー値を、難しい計算式で算出したものです。
信号や、他の交通機関などの影響を受けない環境だと、
平均パワーとNPはほとんど同じ値となります。
(信号が無くて、かつ脚を休ませる事も出来ない峠の登りとか)
そんなパワトレ的には、非効率な環境で走っていたわけですが、
「通勤」「帰宅」という「走らざるを得ない状況」は、
根性なしの自分には返って良かったかもしれません。
※SSTは、それなりに強度の高い運動なので、
公道で行う際は、周りの交通状況に十分注意してください。
自分の通勤路は、帰路は比較的交通量が少なく、
信号の少ない区間があるので、実走でもSSTトレーニングが
出来ましたが、交通量の多い市街地での実施はお勧めしません。
ローラー環境があるなら、ローラーでの実施がお勧めです。
(安全で、効率も格段に高いです)
で、ローラー台トレーニングと言えば、
インターネット上のバーチャルコースを
世界中のライダーとシェアして競い合える
↑わが社の本部長もズイフト体験だ!
これを使えば、単調になりがちで、退屈で、
長続きしないローラートレーニングを、
苦しくも楽しく、継続できるアトラクションに変えることができます。
パワトレ用のメニューもたくさん用意されていますので飽きません。
通勤にプラスして行ったのが、
体力向上の進捗チェックを兼ねた、
週末のロングライド。
というか、これを思いっきり楽しむために、
通勤SSTでしんどい思いをして来た訳です。
距離は80~130kmで峠越えを含みます。
(頻度は、土日のどちらか一方。家族サービスとのバランスを取り、
月2回~良くて3回。朝出かけてお昼までに帰るのがセオリー)
ペースはツーリングじゃなくてファストランなので、
強度はL3メインで、峠はL4。
5分以内で登り切れる丘や低い峠なら強度上げてL5で、という感じ。
「通勤SST」+「週末ファストラン」=FTP向上(巡航速度&登坂タイムアップ)
という結果に繋がりました。
トレーニング開始後から、徐々に効果は出てきましたが、
劇的に効果が出たのは、パワトレ開始から3か月半経ったころ。
以前と同じ感覚で走っているのに、通勤の巡航速度が明らかに上がってる!
あるいは、楽に走ってるつもりなのに、速度が出てる!
そんな日が「突然」来ました。
思わず走りながら笑ってましたw(*゚o゚*)w
が、果たして本当にそうなのか?
なんか突然すぎて、数値的に検証しないと、信用できない… (・_・;?
その週末、峠に出かけて20分MMP※の
確認をしたのは言うまでもありません。
※画像はイメージです
結果、感覚は間違っておらず、20分のMMPを更新しました。
20分のMMPに0.95を掛ければ、FTPが推計できるのです。
20分MMPの更新=FTPの向上、という事ですね。
※MMP:Mean Maximal Power
平均最大パワーのこと。
ある特定の時間で、過去にそのライダーが出した平均パワーの最大値。
よく使われるのが、5秒、1分、5分、20分の4つの単位時間。
FTPは、言い換えれば60分のMMPと言える。
単位時間が長くなるほど、持続できるパワーは低下するので、
MMPの値も単位時間が伸びるととともに下がる。
グラフにすると、こんな感じ↓↓↓
これをMMPグラフと言います。縦軸がパワー、横軸が時間。
単位時間が長くなると平均パワーの最大値も徐々に低くなってゆきます。
赤線:この1年の最大値、濃いピンクの線:16年12月、黄緑線:16年7月。
直近の12月(濃いピンク線)は練習不足と体調の影響で
MMPグラフが赤線よりも下がっていますが、それでも7月より高い値です。
20分以上かかる峠を全力で走ったり、
ローラー台で20分全開走をした際の値が、
「20分MMP」。
60分間、限界の走りをするのはつらいので、
通常、この20分MMPからFTPを推計します。
FTP=有酸素運動の指標なので、精度を高める為には、
無酸素域のパワーに頼らない状態(いわゆる脚が削られた状態)
で20分のMMPを計測する必要があるので、
5分全開走とかをを事前に行うのが本式。
自分の場合は、MMPを測る峠まで40~50kmはあったり、
小さな峠や丘を越えて自然に脚が削られるので、全開走は省いてます。
そして、MMPを体重で割ったのが、パワーウェイトレシオ。
体重1キロあたりの仕事率。
体重の軽さがモノを言うサイクルスポーツでは、
出力の絶対値はもちろん、体重比で何ワット出せるかが重要。
(特に登りでは)
残念ながら、サイクリストは物理の法則からは逃れられないのです…。
⇒第4回でさらに詳しく!
という訳で、
(自分比で)
速くなりたい
という目標に対して、
SST通勤+ファストランロングライド
で、たった数か月で結果が出ました。
それもこれも、パワーメーター、パワートレーニングのおかげ。
元のレベルが低かったから、伸びしろが大きかった
トレーニングしてなかった人は、何やっても伸びる
というのは多分にありますが、正直、この効果にはビックリです。
「何やっても伸びる」としても、
「何やって」が具体化・効率化され、
「伸びた」結果が、数値で可視化されたのは間違いありません。
パワーメーターは、
今までで一番満足度の高い自転車関連の投資
でした。
絶対値としては高価な機材ですが、この満足度はプライスレスです(=v=)
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