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【IRC FORMULA PRO G6】約半年6,000km実走レビュー!絶滅危惧種「ピュアチューブレス」がメリットしかなかった件。
by: 高橋

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    ワイズロード東大和店の髙橋です!

    2月上旬に山中湖までライドしてきました。
    このライドで私がGARMINを使用しはじめてから100回目の100マイルライドとなりました。

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    40℃を超える酷暑であろうと、ボトルの水が凍って飲めなくなるような厳寒であろうと走り回る私ですが、実は昨年8月に発表されたIRC FORMULA PRO Gen6のプロトタイプを頂戴し、「使いきるまで走ってください!」と言われていたので、ここ半年は主にこの新作タイヤを使っておりました。

    今となっては非常に希少な「ピュアチューブレス
    自転車業界においては絶滅危惧種とも言えるこのシステムのタイヤを、なぜ造り続けるのか。
    実際の使い心地がどうだったのか。

    6,000km超。文字通り使い潰しましたのでレビューしていきます!

     

     

     

    FORMULA PROはどんなタイヤ?

    history

    ロードバイク初のチューブレスタイヤは2,006年にハッチンソンから発表されました。

    実はIRCもその翌年にはチューブレスタイヤFORMULA PROを発表していました。

     

    その後も多くのメーカーからロードバイク用のチューブレスタイヤが発表されるも、下記の記事でご説明した嵌合・相性問題により苦戦を強いられ、今となってはチューブレスレディが当たり前となりました。

     

     

     

    しかしIRCは2008年発売のFORMULA以降、一貫してチューブレスタイヤを作り続けました。

     

    そして2024年8月。デュアルコンパウンドを採用したiRC史上最速のチューブレスタイヤ、第6世代のFORMULA PROを発表。fp-6G-32c-768x407

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     第5世代はトレッド全体に杉目が配置されていましたが、第6世代ではセンター部はスリックになり、シリカ/カーボン ハイブリッド補強を配合することで転がり抵抗を9.97%軽減。さらに耐摩耗性も約82%向上しています。

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    ショルダー部には米ヌカから作られる硬質多孔性炭素素材RBセラミック粒子RICE BRAN CERAMICS COMPOUND 2(RBCC²)を配合し、ドライコンディションはもちろんウェットコンディションにおいても、あらゆる路面状況でハイグリップを保ち続けます。

     

    また、タイヤ幅のラインナップも25Cから32Cまでカバーし、軽さを求めるライダーからロングライドなどを楽しむライダーまで幅広い層に向けたラインナップへと拡充されています!

     

     

     

    取り付け作業

     

    まずは取り付け…の前に重量計測

    28cでの公式重量は310gとのことですが、実測312gでした!

    まあまあ誤差ですよ、誤差。私のが重かった分、他のタイヤが軽くなっていることでしょう。知らんけど。

     

    さてと取り付けですが、結論言ってしまうととっても固かったです。
    タイヤレバーを使えばどうということはありませんでしたが、素手では結構力が必要でした。

     

    今回のFORMULA PRO G6 TL 28cは後輪側はなんとか素手で入れましたが、前輪は諦めてタイヤレバーを使いました。

     

    取り付けこそ苦戦を強いられるものの、チューブが無いため噛み込みの心配もなく、慣れてしまえばクリンチャータイヤ以上に気楽にインストールできます♪

    あとは空気を入れていけばパンパン!!という乾いた音ともにビードが上がっていき、呆気なく作業は完了です!フロアポンプで余裕で空気入れはできました!

     

    FORMULA PRO 6G | アイ・アール・シー 井上ゴム工業株式会社

    ちなみにこちらのサイトに「勘合ホイール表」なるものが公開されていますが、SHIMANOやMAVIC,CAMPAGNOLOの主要な面々はタイヤレバー無しでイケるみたいです。

     

    シーラント不要というアドバンテージ

    今回使用したタイヤはピュアチューブレス。
    チューブレス対応ホイールと組み合わせることでシーラントが不要になるタイヤです。

    リムは前後ともチューブレスレディ対応で、リアに使用しているSMITHのCeraLightは明確に「チューブレス非対応」と明記されていましたが、どちらもシーラントを使用せずに運用することができました。

     

    シーラントが無いことのメリットは3つ

    ホイールバランスが取れる

    流動的で不規則な偏りを生むシーラントが無いためホイールバランスを取ることが容易にでき、より安定した走りが実現します。

     

    タイヤ交換作業が容易で汚れない

    パンクした際にシーラントが穴を塞ぐことは期待できなくなるものの、中にチューブを入れて使う場合などに手を汚すことなく作業可能
    また、室内での作業でも周囲の汚れや、溢れたシーラントの損失分なども考える必要がなくなるため、作業性も良く、前後のタイヤを入れ換えて使用することも簡単にできます!

     

    暫く乗らなくても無問題!

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    チューブレスレディの場合、シーラントが一ヶ所で固まってしまうことを防ぐため、暫く乗らない場合は定期的にホイールを回してシーラントを全体に行き渡らせる必要があります。
    当然シーラントが無ければこんな作業も必要ありません!

    他にもシーラントを追加する必要がない、コストが抑えられるなどありますが、個人的に大きなメリットとして感じたのは上記3点です。

     

    実走レビュー!

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    プロトタイプのため旧ロゴですが、タイヤそのものは新型です。

     

    漕ぎ出し1歩目からわかる圧倒的転がり抵抗の軽さ

    実は以前レビューした第5世代のFORMULA PROの記事の中に「唯一のデメリットはやはり転がり抵抗な気がするが、これはIRCのアンケートフォームに『どんなタイヤを作ってほしいか?」という項目があったため、そこに意見を書かせてもらった。』と記述しましたが、この内容というのが「センター部分の杉目が抵抗となっている気がするからスリックにしてほしい」というものでした。

     

    そのため、今回の新作を見たときは自分の思った通りの方向に進化していることに非常に興奮しました。

     

    そして結果は大正解。漕ぎ出し1歩目から圧倒的な転がり抵抗の軽さを実感しました。

     

    本当にコロコロコロコロとよく転がってくれます!

     

    この圧倒的転がり抵抗の軽さを生み出しているのはセンタースリックやシリカ/カーボンハイブリッド補強配合をセンター部に採用していることだけが要因ではないと思います。

    もう1つの要素として私が思うのが「ピュアチューブレスである」という点です。

     

    ホイール内部に液体が存在することで粘性抵抗が発生し、これも1つのエネルギー損失につながります。

    正直、これを書いている自分でも「胡散臭い」「たかだか数十mlの液体ごときが及ぼす影響を人間が感じ取れるわけがない」という意見はごもっともだと思います。実際は思い込み、プラセボ効果かもしれません。

     

    しかし探求心の塊とでもいうべきフジチカ(FUJICHIKA)から私の直観を裏付けるような完璧な動画がアップロードされていました。
    Youtubeで「シーラントの粘性抵抗を考える」と検索して見てください。非常に興味深い実験動画です。

     

    シーラントは特に初動で大きく変形しますが、今回のタイヤにおいては内部には文字通り「空気以外のものが無い」状態です。何か余分に変形するものが無い以上、エネルギー損失は最小限に抑えられ、結果として走り(特に初速)に表れたのではないかと思います。

     

     

    空気圧セッティング

    先に述べておくと私の体重は60㎏です。

     

    まず最初は前作FORMULA PROの指定気圧の下限値5.0Barでセッティング。案の定硬く感じました。

    これの前に使っていたのが第5世代FORMULA PRO S-LIGHTだったので無意識にそれと比較してしまっている節があります。RBCCのほうがコシがある印象です。

     

    次に今回のタイヤの下限値4.5Barでセッティング。乗り心地がマイルドになるだけでなく明らかにスピードも乗るようになりました。「やはりこれくらいが適正か。」と思いながら使っていると不思議なことが起こりました。

     

    ライド当日に4.5barにセッティングしてライド。その後2,3日経過してから走るとやたらと調子がいい気がするのです。

    当然空気が少し抜けてクッション性が高まっているのは当たり前ですが、それ以上に「なんか速くね?」と思うようになりました。

     

    そして指定気圧以下のセッティングでたどり着いた空気圧セッティングは

    フロント4.1bar

    リア4.3bar

    でした。

     

    一瞬の溜めが発生した直後にグンッと進む感覚があり、ダンシングをしてもギリギリヨレずにちょうどいい塩梅。

    これより下回るとフロントはダンシング時やコーナリング時のバイクの挙動に違和感を感じ、リアはペダリングと加速のタイミングがうまく噛み合いませんでした。

     

    この結果を体感して正直「ここまでかっ…!!!」と思いました。

    私がロードバイクに乗るきっかけとなったバイクはとてもレトロなものでタイヤは650x19cのチューブラータイヤ。父からは「空気圧は高ければ高いほど抵抗は少なくなる」と教えられた人間です。どうしても「やわらかい=遅い」の印象が抜けきっていませんでした。

    これまでも散々常識を壊してきたつもりでいましたが、まだまだ詰めが甘かったと反省しました。

    とはいえ、メーカーの指定気圧を下回るのってどうなんでしょうね?快適かつ速くなるならやらない手はないと思いますが、店員としては「メーカーの指定気圧を守ってください」としか言えません。もどかしい。。。

     

     

    耐摩耗性約82%向上は伊達じゃない!

     一般的にハイグリップなスポーツバイク用タイヤは摩耗が早い傾向にあります。

     

    FORMULA PROも前作では2,000㎞も走ればセンターの杉目が薄くなり「減ったなぁ」と実感しましたが、新モデルは2,000㎞走っても「減ってる?」と疑問に思うレベルで変化が少なかったです!

     

    シーラント無しで6,000㎞超使用して 一度もパンク無し!

     

    2月に群馬の山中で大きめの石ころでタイヤサイドを傷つけてしまいました。その瞬間は冷や汗をかくとともにパンクも覚悟しましたが、多少損傷した程度でエアーが漏れるといったこともなく、その後もチューブレスとして800㎞ほど問題なく使用していました。

     

    シーラント不使用なので3,000㎞走ったところで前後のタイヤを入れ替えてローテーション。とも考えましたが、今回摩耗テストと考えあえて前後を入れ替えることはせず運用していました。

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    摩耗しやすいリアタイヤも6,000㎞超使用してもスリップサインはまだ残ったままです。

     

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    いよいよ限界かな?と思い新しいタイヤへと交換しましたが、その交換理由はパンクなどが原因ではなく「精神衛生上よろしくないから」という理由です。
    群馬の山中で石を踏んだ際にタイヤのサイドに傷が付いてしまい、そこがポッコリと膨れてしまいました。当初の目標は「パンクするまで使う」でしたが、あまりパンクの心配をしながら走るのも嫌ですからね。

    数多の私のヘビーライドを支え、タイヤとしての天命を全うしてくれたと思います。

     

     

    まとめ

    取り扱いやすさ、乗り心地、運動性能、耐久性、そして価格。どれをとっても文句なしのタイヤでした!

     

     

    レーサーにもポタリング勢にもオススメです!

    チューブレスタイヤの運用に不安がある方でもFORMULA PRO TL RBCCならクリンチャータイヤの延長のように使用可能です!初めてのチューブレスに、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか?