日本最大級のスポーツサイクル専門店!サイクルライフサポート! 川崎で自転車をお探しならY's Road 川崎店
2023/04/14 08:55
軽量化はレースにおいて重要になるファクターの一つです。体重軽くした方が早いじゃん!という意見もございますよね。しかし、理論で考えてみると意外と車体を軽くすることには重要な意味が見えてきます。今回は理系全開で堅苦しい理論が多めになりますが、是非ご一読ください!!
目次
軽量バイクの代表とも言えるTREK emonda.
一般的に言われるクライミングバイク。確かに通常のモデルと比べると非常に軽い作りになっており、ものによっては全体で6kg台に突入することも。しかし、車体を1kg軽くするのと体重を1kg落とすのであればどう考えても体重を落とす方が楽ですし、車体と人間の総重量は落ちやすいですよね。ではなぜ軽量化が重要なのか?
結論としては「車体の軽量化は体重の軽量化より効果的だから」といえます。それではこの理論の裏側を見ていきましょう。
全ての物体には重心があり、ぶっきらぼうな言い方をすれば自転車を動かすときは自転車と人間の2物体が同時に動いていることになります。この時、重心は自転車と人間の重心を合わせた位置になります。(写真参照)
このとき、人間が重ければ全体重心は上側に、車体が重いと重心は下側に動きます。また、人間の姿勢がエアロポジションになれば下側に、身体を持ち上げれば上側になります。この前提と次の事実を用いると軽量化の意味が見えてきます。
重心が上に行くため、実際にかかるモーメントが大きくなり、スプリントや瞬時の立ち上がりが容易になります。モーメントとはかけた力×支点の距離で表され、簡単な例を挙げるとシーソーで同じ体重の人が乗った際、端に寄った方が下に行く、という現象を表現する為の指標です。代表的な例を挙げるのであれば、プロレースで個人TTのゴールスプリントと通常のロードレースのスプリントではスピードがまるっきり違っています。それでは改めて軽量化した場合の車体のチカラのかかり易さを計算してみましょう。
身長175cm,サドル高71cm,体重70kgに対して車体重量を10kgと8kgのバイクで比較してみましょう。同じ力をかけたとき、どうなるか計算してみましょう。
簡単の為、車体の重心と人の重心の位置を同じ場所にし、クランクまでの距離などを下の写真のように設定します。。すると、重心の位置は約1.6cm程度上昇し、200Wかけた際のモーメントは約2%変化します。この2%の変化はプロにとどまらず競技志向なお客様にも重要で、スプリントの差し合いでいつ仕掛けるか、となった時人間の判断速度に非常に近いです。一般的に人は0.1~0.2秒が限界で、出遅れた!!という現象を2%の差は埋めてくれると言えるでしょう。
確かに人間を軽くすることでクライムは楽になりますが、その分問題もあります。先ほどの重心の事をもう少し考えると、総重心は下に寄る為、パワーを掛けた時のモーメントが低下してしまいます。例えば70kgの人と60kgの人を比較して見ましょう。今回も簡単の為条件設定を同じにすると、モーメントは60kgの方が2%近く通常のライドで損をしている計算になります。そして、普通に考えて70kgの人が10kg落とすのは相当大変です。そこまで軽くした結果スプリントの方でロスが発生すると言うある種のジレンマが発生しているわけです。トラック競技にムキムキの選手が多いのはこれが原因であるともいえます。
確かに2%のために・・・と考えるのは野暮かもしれません。一方で各ブランドも我々が最高のパフォーマンスを引き出そうと挑戦している事がこの事からも言えるのではないでしょうか。改めてバイクを見ると違った見方が出来るかも知れませんね。
さて、ここで疑問になるのがタイヤ重量くらいでヒルクライムや巡行は楽になるのか?といったものです。
結論から言うと数値上では30%ほど変わります。というのも、ホイール及びタイヤは回転体の為、特に外側にあるタイヤは軽ければ軽いほど少ないエネルギーで開店することができます。イメージとしては、バケツを振り回すとき、中に水を入れるより空の方が回しやすいというイメージになります。もう少し理論的に説明すると次のようになります。
ここからは理論になりますが例えばホイールを前後1000gずつ、タイヤがチューブと合わせて350gと仮定しましょう。ホイールはハブを軸として回転運動をしているため、下に行った面を上に持ち上げるためのエネルギーが必要となります。この時必要になるのが位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)の考え方。地面を基準にすると上にあげるのに必要なエネルギーは700Cホイールであれば70㎝(0.7m)持ち上げるあげる必要があるので、
おおざっぱな計算にはなりますが重量(kg)×重力加速度(m/s^2)×高さ(m)で
(1000+350)/1000×9.8×0.7=9.26(J(ジュール))必要になります。後輪も合わせればおよそ18.5Jと200Wで踏めば0.09秒で1回転する計算となります。(実際はディスクローターやスプロケットの質量や地面との摩擦もあるため、実際に要するエネルギーはもう少し大きくなります。)
さて、ここからが本題になります。重力加速度と高さはほぼ変えようがありません。そのため、ホイール回転に要するエネルギーを減らすにはホイールとタイヤを軽くする必要があります。
ではクライミングホイールであるMAVIC COSMIC SLR 32 DISCで考えてみましょう。フロント630g、リア730g、そしてタイヤを260gまで軽くすると(Panaracer AGILEST Lightと同社の軽量チューブを合わせた重さ)
必要なエネルギーは前後ホイールで合わせて12.9Jと約30%も減らすことができました。剛性などのロスもありますが理論上もともとの7割程度でホイールを回せるわけですから、長丁場になればなるほどその効果は絶大なものとなります。
加えて、MAVICはリム外周を軽くしているため、リム重心がハブに寄り実際に必要なエネルギーはより低いといえます。(下図解参照)
これがタイヤ軽量化・ホイール軽量化によって得られるメリットです。実際は駆動抵抗など別の要因もあるため、ストップアンドゴーの立ち上がりなどで必要なエネルギーは異なりますが、それを加味しても効果的であるといえますね。
今回はよく話題に挙げられる軽量化の是非について考察しました。厳密な考察をするとブログでは収まりきらないので多少簡略化してご紹介しました。それであっても軽量化の理由、メーカーが1gを追求する理由が明らかになったかと思います。次の選択としてこのブログが参考になれば幸いです。
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