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2019/07/26 18:56
【使える!軽い!ヒルクライムにも!】チューブレスタイヤでこんなに軽くていいんですか?【PANARACER RACE A EVO4 TLCインプレ】
by: 永平 宏行
バイオレーサーの中の人です。
今期のハルヒル・富士ヒルに向けて購入した「飛び道具」、
PANARACER
RACE A EVO4 TLC
700×25C
※TLC=TUBELESS COMPATIBLEの略でいわゆるチューブレスレディ
4月末に購入してレースとトレーニングで使用して大分時間が経ちましたので、インプレしたいと思います。
まずインプレの前にスペック解説を。
【EVO4 TLCのここがキモ!】
何が「飛び道具」かと言うと、とにかく軽い!
700×25Cのチューブレス&チューブレスレディタイヤの中で頭二つ抜きん出る軽さ。
今までの
チューブレスタイヤは重い
というネガティブな既成概念を打ち破るスペックです。
どのくらい軽いかと言うと、一本
208g!
カタログスペックは210gなのでサバを読むどころか、下回ってます
「そんなもん?」
って思うなかれ。
チューブレス(&レディ)タイヤは300g台が当たり前。
軽めのモデルでも240g~270g前後がやっと。
自分がこのEVO4の前に使っていた「GIANT GAVIA RACE 0」というGIANTの最上級チューブレスレディタイヤはそのいわゆる「軽めのモデル」。
それでも実測273g(カタログデータは255g)。
IRCのフォーミュラープロライトも同じく270g(こちらは「チューブレス」)。
そんなチューブレス界にいきなり、「桁違い」に軽いタイヤが登場したのです。
軽量化の効果が一番大きな部位がホイール外周であることは、誰もが認めるところ(その効果の度合いには諸説ありますが)。
そこがタイヤを変えるだけで片輪60g「も」軽くなるのは、ホイール外周の軽量化効果を体感したことのある人なら、どれだけ効果が大きいかお分かり頂けるかと思います。
ホイールということを抜きにしても、前後のタイヤ交換で120g「も」軽くなるのは、軽量化に血まなこになっているヒルクライマーには朗報と言えます。
と書いてしまうと
「軽さに振った性能の偏ったヒルクライム向け決戦タイヤ」
と思われるかもしれませんが、さにあらず。
PANARACERのラインナップの中でも
「オールラウンドに使えるレースモデル」
という位置づけの「A」の名前を戴くだけあり(後ほどインプレしますが)登坂以外もしっかりこなせるモデルとなっています。
軽いだけじゃなくオールラウンド!
なのも、このタイヤのもう一つのキモです。
【そもそものチューブレスの優位性】
「軽さと性能ならプロも使ってるチューブラーなんじゃない?」
という意見もあろうかと思います。
そこで簡単に一般論として「チューブレスの優位性」のおさらいをしておきます。
確かにホイールを含めたシステム全体の重量は、一般的にチューブラーの方が軽くできます。
ただし、「走って軽い」「真に高性能」なのはチューブレスなのはもはや世界の常識です。
一番の理由は転がり抵抗の軽さ。
チューブレス < クリンチャー < チューブラー
この順番で転がり抵抗が軽くなるのは実走の感覚だけでなく各種実験結果でも明らかになっています。
パナレーサーさんも自社サイトでEVO4のタイプ別性能比較チャートを掲載。
チューブレスの転がり抵抗の低さが分かります。
グリップと乗り心地こそチューブラーとクリンチャーに譲りますが、
チューブレスは正五角形に近い優等生ですね。
チューブレスの転がり抵抗が低い理由はチューブが無いことによるヒステリシスロス(タイヤ変形により熱となって逃げて行くエネルギーロス)の低さ。
もちろんクリンチャー譲りの真円度の高さも転がり抵抗の低さに寄与しています。チューブラーが構造的に劣る部分ですね。
また、ケーシングとチューブという二重構造ではないため、路面追従性(コンパウンドに頼らないタイヤ変形によるグリップ力)も高く、同じ理由で乗り心地も非常に快適です。
空気圧を落として快適性に振っても、転がりが軽く、グリップも効くという夢のような性能をチューブレスなら構造的に実現できるのです。
重なる内容も多いですが、以前書いたこちらの記事も参考に。
【タイヤインプレ】チューブレス!波に乗るなら今!最強性能を見逃すな!【GIANT GAVIA RACE0】
【ようやくインプレ!】
一番大切な、実走してみてどうか?記してみたいと思います。
前提として、
・自前で長期間使ったチューブレスタイヤはGIANT GAVIA RACE0だけなので、それと比べてどうなのか?
・近年使ってきたハイエンドクリンチャー(VITTORIA CORSA G1、MICHELIN POWER COMPE、CONTINENTAL GRANDPRIX TT、〃 SUPERSONIC)と比べてどうなのか?
というモノサシでの比較となります。
始めにざっくり結論をまとめると、
「ハイエンドのライバル製品と同等かそれ以上の性能を持ちながら、頭二つ抜きんでた210gという軽さが登坂でアドバンテージを発揮する“使えるオールラウンド軽量タイヤ”」
というコピーになるでしょうか。
もうちょっと深堀しましょう。
これまで使ってきた上記タイヤ群の最高性能を5つ星として、EVO4 TLCを評価します。
現状、ライダー体重61~65kg(振れ幅大きいw)でF:6.3、R:6.5BARで使ってます。
もうちょっと下げても良いかもしれません。
【★で評価】
・転がり抵抗 ★★★★☆
「ハイエンドタイヤとして」及第点。
「ロードバイクのタイヤ全般」としてならかなり軽い走行感。
これまでのベストはGAVIA RACE0とPOWER COMPEがほぼ同等でしたが、それには一歩及ばないものの、十分に軽く転がります。
・グリップ力 ★★★★☆
転がり抵抗に同じく、ハイエンドなら及第点、タイヤ全般ではかなり高いレベル。
これまでのベストはCORSA G1(G2は試していません)。グリップ番長と勝手に呼んでますが、それと同等か少し劣るレベルかと。
CONTINENTALのBLACK CHILIコンパウンド採用モデルと同等とは思います。
逆に転がりの軽さに振っているGAVIA RACE0とPOWER COMPEよりも断然グリップするので、安心してダウンヒルのコーナーを攻められます。
自分、登りは遅いですが下りはそこそこ速いと自負しています(STRAVAでKOM獲るレベル)。
かなりカッ飛んで攻めるのですが、チューブレスによる構造的なグリップ力(路面追従性)と、コンパウンドによる物理的なグリップ力の両方の効果で、踏ん張りが効かなかったことは今まで皆無。
GAVIA RACE0とPOWER COMPEは、50km超で入るような高速コーナーで踏ん張りが効かずに、ズルっとグリップを失うことがあり何度か肝を冷やしましたが、EVO4はそんな不安はゼロ。
東京近郊限定の例えですが、奥多摩周遊道路の下り高速コーナー(檜原側、奥多摩側ともに)を50km超でコーナリングしても、このタイヤは音を上げませんでした。
タイトなヘアピンカーブでは、上記タイヤだと想定ラインから外れてしまうのですが、EVO4なら思ったラインでしっかりクルンっと回ってくれました。
グリップが効くのでブレーキ性能も高く、コーナーギリギリまで最小限の減速で狙ったラインに乗せられます。
頼もしいグリップ力です。
・振動吸収性 ★★★★☆
チューブレスの美点のひとつが振動吸収性の高さですが、チューブレスだから!という期待が高いと少しがっかりするかも。
悪くは無いと思いますが、GAVIA RACE0の「チューブレスらしい」振動吸収性には一歩及ばない印象です。
まだ最適空気圧の煮詰めが足りないので、この印象はセッティング次第で今後変わるかもしれません。
もちろん、クリンチャーと比べたら断然快適です。
クリンチャーはどう頑張っても硬いですよね…。ラテックスチューブはカーボンリムに使えないとか使用条件が限定されますしね。
・耐久性 -
耐久性はまだ分かりません。
ロラトレ主体なのと天気の悪さ、家庭事情であまり外で乗れていないので。それでも数百キロは走ってますので、その範囲で言えばトレッドの減りは早くは無いと思います。
・コストパフォーマンス ★★★★★
高い。値段じゃなくてコスパがw
ハイエンドのチューブレスタイヤが軒並み7千円以上~、高いものは1万円前後する中で¥6,500+税なのは安くは無いけど、この性能を考えたら十分にコスパは良好。
パンクして交換する際のお財布へのダメージも減らせます。
最後に、自分的評価項目。
・登坂力
これを求めてこのタイヤを買ったのでw
★の数は、
★★★★★
です!
純粋に登坂力に優れたタイヤは超軽量チューブラーとかがあって、それらには及びませんが、前述のこれまで使ってきた「一般的なハイエンドタイヤ」をモノサシにすると、★5つです。
やはり軽さが効いてるな~と。
まあ、登りはぶっちゃけ最後は体力勝負な訳ですが。
レース中に、そんな体力勝負の限界域で斜度のキツイ坂を登っている最中に「ふっ」と軽く回る瞬間があって、「あれ?今何が起こった?」って思ったら、そう言えばタイヤが軽かったんだとw
SUPERSONIC+超軽量チューブ的な登りの軽さが、諸性能を犠牲にせずに実現されている、と言えば伝わるでしょうか。
巡航している分には軽さには気付きづらいですが、斜度がキツくなってトルクが要求されるシチュエーションで軽さの恩恵が感じられました。
(それでもPB更新できなかったのはフィジカルが低下しているからか…機材のせいではありません)
RACE EVO4 TLC、総合評価は
HIGHLY RECOMMENDED
です!
【クリンチャーとの重量比較】
今回買ったEVO4 TLCは25c。
EVO4 TLCは25cと28cしかないので、軽量な25cを選択した次第。
クリンチャーと重量比較するのも同じ25cで行います。
25cで軽いクリンチャーと言えば、GRANDPRIX TT(190g)。耐パンクベルトが入った25cのSUPERSONIC、と勝手に呼んでます。
ホイール以外のシステム重量で比較します。
GRANDPRIX TT 276g
(タイヤ、チューブ(70g)、リムフラップ)
EVO4 TLC 262g
(タイヤ、チューブ、リムテープ、チューブレスバルブ、シーラント30ml)
EVO4、同サイズの軽量クリンチャーより14g軽い♪
クリンチャーより軽く仕上がって、シーラントで対パンク性が上がり、グリップも乗り心地も上がって、転がり抵抗が減る。良いことしかない。
(自己責任ですが、シーラントは20ml程度でも運用できるので更に10g軽くできます)
【装着性】
チューブレスでみんなが気になるやつw
ただ、これはタイヤとリムの相性次第なので組み合わせは星の数ほどある訳で…。
自分の場合はGIANT SLR0ホイールに付けましたが、嵌める分には簡単に手で装着。
ビードの上がり具合は、片輪はコンプレッサーであっさりと。
もう片輪はリムテンションの影響でリム外径が小さいのか、空気がダダ洩れ。
リムテープを1巻きプラスしてビード座部の外径を増してあげたらすんなりビードが上がりました。
今回急いでいたので、ハンドポンプでの上がり具合は検証していませんが、これまでの経験上行けそうな気がします。
【補足情報】
初期ロットのエア抜けについて。
パナレーサーから初期ロットに対する交換対応が発表されました。理由はエア抜けが早い個体があるから、というもの。※もちろんシーラントを入れてのチューブレスレディでの運用において。チューブドでの使用は除く
下記に該当する商品は良品と交換できますので、「エア抜け早くね?」という方はご確認ください。
交換対象の製造ロット:1903
パッケージのバーコードラベル右上の番号でご確認ください。
パッケージを破棄していてもエア抜けが早い症状が確認されれば交換対応してもらえます。詳しくはパナレーサー様のお客様相談室 (フリーコール 008822 5381 平日 9:00~17:00)にお問い合わせください。直接ユーザー様とのやり取りもしてもらえますし(自分で作業できて急ぎならこの方法がお薦め)、ショップを通しての交換もしてもらえます(急いでいなくてショップに交換を頼むならこの方法がお薦め)。
自分のがまさにコレで、一晩で1BAR程度下がります。
1週間置くと、もう乗れないレベルにペコペコになります。
「ラテックスチューブを使ってるクリンチャー(やチューブラー)」と考えれば「そんなもん」と思えますが…。でもちょっと抜けが早いなと思っていたらやっぱり交換対応に。
エア抜けの程度も個体差があるようで、数時間で数BAR落ちるものもあれば自分のようにラテックスチューブ並のゆっくり目な個体もあるようです。
社内でも某店の某マニアックなスタッフが抜けの早い個体に当たっていたり、社外でも某有名店の某有名店長さんが同じ目に遭っていました(が、それでも某有名レースでゴールドのタイムで優勝してましたねw)。
【まとめ】
初めにも書きましたが、まとめると
「ハイエンドのライバル製品と同等かそれ以上の性能を持ちながら、頭二つ抜きんでた210gという軽さが登坂でアドバンテージを発揮する“使えるオールラウンド軽量タイヤ”」
個人的に(初期ロットのエア抜け問題さえ無ければ)ほぼパーフェクトなチューブレスレディタイヤだと思います。
いよいよ、チューブレスも多様な製品がリリースされ成熟期に入ったかと思います。
そんなチューブレス戦国時代に「軽さ」という他に無い強みを持って登場したEVO4 TLC。
チューブレスデビューする人、チューブレスタイヤを買い替えする人。
このタイヤ、恐らく後悔しない選択肢になると思いますよ!