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2025/07/17 18:47
【自動変速】クロスバイクは刻を見た~シマノ「Q’AUTO」スタッフインプレッション
by: 石澤貴志
ワイズロードオンラインの石澤です。
自転車の進化って、未来を予知することは大変です。
10年位前にはわたくし、「ロードバイクにディスクブレーキはなかなか普及しないけど、電動変速は市民権を得るだろう」なんて思ってました。
実際には油圧ディスクの方がずっと先に普及しましたね。わたくしはまだリムブレーキの車体に乗っているんで、いつ「そちら行きのバス」に乗ろうかと思い続けて今に至っています。
そんなスポーツバイクの進化ですが、非常に興味深い新製品を搭載したモデルが試乗できる機会をいただきましたので、皆様にも未来を垣間見ていただこうと思います。
NESTO AUTOMATE

今回ご紹介する車体は、コーダーブルーム傘下のブランド「ネスト」から発表されたクロスバイク「オートメイト」。
胴抜きのロゴは小さくヘッドチューブ寄りにオフセットされ、カラーリングもマットグレー(よく見るとグラデーションがかかっています)とシンプルでと快適な装い。




油圧ホースもステム下からの内装、フロントギアもシングル、スルーアクスルなのでクイックリリースのでっぱりも存在しないなど、全体的にフラットなフォルム&グラフィックにまとめ上げられています。
果たしてこのバイクのどこに未来の要素があるのか。
それは、このバイクに装着されたコンポーネントにあります。
SHIMANO Q’AUTOとは
先日シマノから発表されたばかりの変速システム、 「Q’AUTO (クォート)」を搭載しました。
このシステム、電動変速なのですが、そのキモは「自動変速」であること、さらに「AI学習された変速アルゴリズムを搭載していること」が大きな特徴。

Q’AUTOの核心部分は、リアディレイラーとハブがエレクトリックワイヤーで結合されたこのあたり。
ハブにダイナモ(発電機)と小容量のキャパシタ(蓄電器)が搭載され、変速に必要な電力は都度ハブから供給されます。
他モデルのDi2は専用バッテリーから電力を供給するのですが、バッテリーと違って充電の必要がなく、寿命もずっと長いのが特徴です。

ここからがQ’AUTOの真髄ですが、ハブから送られる速度(ハブの回転数とあらかじめ入力したホイール外径から算出)、ケイデンス(同じくギア歯数から算出)、斜度(斜度センサーで計測)のデータを参照し、シマノがあらかじめAI学習させたアルゴリズムに基づき、バイク側が適切なギアに自動変速を行うのです。

そんなわけで、このQ’AUTO搭載バイク「AUTOMATE」はシンプルなスタイルを極めました。
完全な自動変速を前提にしているので、シフトレバーも必要ありません。

使うギヤが軽すぎ、重すぎと思った時には、リアディレイラー裏側にあるボタンをダブルクリックすれば、好みのケイデンスに合わせた変速モード(3段階)の調整が可能です。
メーカー公式サイトの情報はこちら
変速操作は意識の外に

実際に街中を試乗する弊社スタッフ。
わたくしも同じように乗ってみましたが、変速タイミングは好みのセッティングに合わせることで快適なフィーリングでした。
変速操作という「余分な動作」は意識の外に追いやり、乗ることだけに集中できます。
今回のような信号の多い街中を流すような乗り方なら、軽めのギアを使うモードが個人的にはぴったりでした。
ただ、信号待ちなどで急減速する際には要注意。一気に停車してしまうとシフトダウンが間に合わず、再発進を重いギアで漕ぎ出すことになってしまいます。
機械が変速する時間を残すため、常に軽くクランクを回す「自動変速向きの漕ぎ方」に慣れてしまうのが良さそうです。
むしろそのことを考えると、これまでスポーツバイクに乗ったことのない人、変速に馴染みのない人ほど、このシステムにすぐ慣れるのではないかな?という気がします。
AUTOMATE以外でQ’AUTOが輝くシチュエーションとしては、グラベルバイクでの使用があります。
ハンドルトップを持って荒れたグラベルを走行中、シフトレバーに手を伸ばす暇がない時でも、Q’AUTOが最適なギア比を提供してくれます。
あなたの漕ぎ方に合わせてAIを調教
既にお伝えしたように、使うギヤが軽すぎ、重すぎと思った時には、リアディレイラー裏側にあるボタンをダブルクリックすれば、好みのケイデンスに合わせた変速モード(3段階)の調整が可能です。
それでも変速のタイミングが気に入らないという方には、更なる装備が使用可能。


それがこのオプションパーツとして用意されるシフトスイッチ。
このシフトスイッチ、単に「手動用の変速スイッチ」ではありません。
このスイッチで変速した情報はQ’AUTOに送信され、「あなたがどんなギアを好んで使うか」を学習してくれるのです。
およそ6km程度、30分の乗車でデータ収集は充分。その間にあなたがシチュエーション別に選んだギアを学習し、手動で操作した時のように好みのギア比を選んでくれます。
ちなみにこのシフトスイッチ、通常は別売りですが、AUTOMATEでは貸し出しサービス(期間限定で無料)があります。詳しくはこちら。
電動がさらなる未来を切り拓く
現在はハブとディレイラーだけで完結しているにもかかわらず、滑らかで手を煩わせない変速を提供してくれるQ’AUTO。
更に技術が進めば、複数の情報源を元にもっと最適な変速アルゴリズムが提供できるようになるかもしれません。
例えば、近年自転車にも採用が進むレーダー。
前方の車を感知し、車間距離が詰まりつつある時には「これ以上ライダーは加速しない」と判断したり、車間距離が急激に離れつつあるときは加速を予想するなど。
GPSナビと連携し、テクニカルなコースを走っているときは、頻繁な加減速に備えるなど。夢は膨らむばかりです。






