【シューフィッターの目線】絶対に続けたい連載今回のテーマは靴選び、靴づくりの永遠のテーマである”ラスト”について解説!【VOL.5】
by: 後藤悠介

 

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 スポーツシューフィッター有資格者がおくる、靴選びに役に立つかもしれない情報や、シューフィッター目線での製品情報などお伝えしていきます。

 

 今回は”ラスト”について!

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前回の記事から見事に間があいてしまいました…
またぼちぼち書かせていただきますのでお付き合いいただけたらと思います。
ここまで「靴を選ぶ」という行為において知っておいていただきたい予備知識の部分を連載テーマに挙げさせていただきましたが、本日の記事と次回の記事をもって一区切りとさせていただき、それ以降は当店で取り扱っているシューズ各々の魅力についての掘り下げを記事にしていこうかと計画中でございます。

閑話休題

本日は前回の”ボリューム”に続いて重要な靴の概念である”ラスト”について触れてみたいと思います。
ラストとは靴の「型」を指す言葉で(LAST)、そのシューズの設計図、骨格とでもいうべきものになります。
以前の記事でも触れましたが、人の足は千差万別。その全てになるべく沿ってきちんとしたサイズ(=長さ)で履けるよう、メーカーが膨大なデータから割り出した型を造り、それを基に量産しています。
すなわち、このラストはそのメーカーのシューズ製造に対する熱意の表れと言っても過言ではないのです。

その熱意はどこにあらわれるか…それは

千差万別の足型に対して「なるべくたくさんのラストを用意」することで適正サイズでシューズを履けるようにしている…というところにあるのでは…と私自身は考えています。
ではその具体例を見ていきましょう。

 

さすが世界のSHIMANO。これは感心せざるを得ない!

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写真はSHIMANOのシューズラストを図解したものです。
公式にこういった資料を配布しているサイクル用シューズメーカーは他にあまり見たことがありません。
ラストは靴の設計図ですから、門外不出と言っても過言ではありません。
そんな中、ユーザーの視点に立ってこの部分をわかりやすく解説してくれています。
さすがと言わざるを得ない!

SHIMANOは「SHIMANO DYNALAST」という型を基準として、そのバリエーションとして「DYNALAST WIDE」「DYNALAST WOMENS」というオプションを用意しています。
これにより、ある特定のサイズ(長さ)に対して、それを履く足のボリュームに合わせた3つの「靴側のボリューム」があるということです。

DYNALASTだけでなるべく完結するようにできてはいるものの、例外はもちろんあるわけです。
じゃあサイズを上げてボリュームを補おう!というのは本末転倒であると以前の記事でも触れさせていただきました。
そこでサイズを上げずにしっかり履ける、足の居所を補完するためのオプションをSHIMANOシューズは用意している!というわけです。
その他SHIMANOはスニーカータイプのシューズにDYNALAST WIDEよりさらにボリュームのある、その名も「VOLUME TOUR LAST」というものも用意しています。

ラストは可視化することが難しいので、その特徴というのはなかなか言葉にするのが難しいのですが…各メーカーがどういう商品展開をしているか掴んでおくと選びやすくなるかもしれません。
次章では各メーカー毎のラスト展開についてご紹介致します。

 

簡単に、ですが…当店取り扱いブランドの展開ラスト早見表を作ってみます。

 

・SHIMANO→SHIMANO DYNALASTを基に一部モデルにてワイドラスト、ウィメンズラストを展開。よりボリューム感のあるVOLUME TOUR LASTも展開。

・SIDI→一部モデルでハイボリュームタイプのMEGAラスト、ウィメンズラストを展開

・DMT→ラストのオプションはなし

・Fi’zi:k→ほとんどのモデルにおいてEVO3 LASTを使用。その一部ロード用モデルにてEVO3ワイドラストを展開

・NorthWave→一部モデルにワイドラストのオプションを展開

・GIRO→ラストのオプションはなし

・LAKE→Sports,Competition,Raceというシューズグレードに合わせたラストが三種あり、それぞれのラストにワイドラスト、ウィメンズラストあり。一部モデルにはエクストラワイドラストというオプションも展開

簡単ですがこうしてまとめてみると、意外とどこも複数ラストを用意していることがわかります。
ラストは可視化できませんので、あとはこれまでの連載のことを思い出していただきながら履くのみ!なのですが、その際に是非次章のことをお伝えさせていただきたいです。

 

先入観を無くそう!それが靴選び(ラスト選び)の前提条件だ!

 

靴選びの出発点は”ご自身の縦方向の実測長が対象となる靴の対象となるサイズに対してどれほどの割合を占めるか”、ここに尽きます。

勘の良い方はもうお気づきかと思いますが、私ここまで「幅」とか「甲」とかそういうワードを使っておりません。

馴染みのある言葉と思う方もいらっしゃると思います。

ただ、こういったワードが実は靴選びのハードルを上げてしまっている!と私は感じています。

実際にこういったシューズのレビュー記事やブログなどを拝見させていただくと、非常に使用率が多い!これらのワードを基準にして文章にしているものがかなり多い印象を受けます。

わかりやすく言えば

「この靴は幅広甲高向きですね!」

とか

「この靴は細いですね!」

など。

 

もちろんそのシューズを知る上で、ある程度参考になることは間違いありません。

わかりやすい文言ですので、ざっくりとしたイメージを掴むことはできるでしょう。

この点においては異論は唱えませんが、ただしこれは客観視した物の見方というには不足な気がします。

「どういった足にどういったサイズを合わせるのか」によって履いた感じも変わってきますし、「どのような素材を使ったシューズに対して足通ししているのか」でも履き心地は変わってきます。

もう少し客観的に評価するのであれば、パッとその靴に対してこうだ!という決めつけをなるべくであれば無くしていただくのが良いのではないでしょうか。

専門的な知識がなくても、「こういう足の特徴に対して、こういうサイズを当てて履いている。そのシューズの型にはこんな特徴があって、こういう素材を使っているからこういう履き心地になる」という理由づけをしながらシューズを選んでいただければ、きっといい一足に出会えるのではないでしょうか。

そのために是非とも覚えておいていただきたいのが今回書かせていただいたラスト(型)という考え方です。

 

こればっかりはもう履きに来ていただきたい!それがベストです。

 

 

今回はラストという観点にて靴選びについてお話しさせていただきましたが、前述した通りラストとは可視化しにくく言葉で伝えると抽象的かつ主観的になりがちということがなんとなく理解していただけたかと思います。
ここはもう履いていただくしかありません。
ここまで長文を展開しておいて非常にざっくりとした結論づけになってしまいますが、「そのシューズのラストを自身で体感する」ということが一番だと考えております。
ただ、その履いて体感するという行為に、これまで連載させていただいた内容が加味されれば、その体感がより納得のいくものになると確信しております。
そのお手伝いを是非させていただければと思いますので、シューズ選びの際は是非店頭へ出向いていただければ幸いです。

さて、ここまで5回に渡って連載してきましたシューズの選び方ですが…

まだ終わりません!
もう一つだけ大事なことをお伝えさせてください!

前章でも少しだけ触れましたが、次回はシューズ選び(特に自転車用)に役立つ知識の一つである「素材」について書かせていただきます。

もう少しだけお付き合いください。
よろしくお願いします。