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自転車業界の間違った常識!?「ホローテック」って何を指す言葉なの?
by: 石澤貴志

ワイズロードオンラインの石澤です。
自転車を構成する要素には、多くの規格やそれに関連する用語が存在します。
その中でも、特に「何を意味するのか」が誤解されている、この名前について解説いたします。

 

自転車をカスタムすることで走りがグレードアップ可能です!

組み上がった状態で販売されている「完成車」も、その構成パーツは個別に交換が可能。
どのような目的に自転車の性能を強化させたいか、ご要望に合わせて、どの部品をどのようなものに交換するべきかは様々。
また部品同士の互換性もチェックが必要です。

カスタムによって自転車の性能をどんなものに換えられるのかは、こちらの記事もチェックしてください!

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チャットでご購入前のご相談もできます!

そんなワイズロードオンライン宛のお問い合わせは、便利なチャット接客がご利用可能です。
上記の記事をご確認の上、お客様の希望する車体の使い方やご予算などをお知らせいただければ、いただいた情報に合わせてカスタムの内容をご案内いたします。

 

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 そんなチャットをはじめとしたお問い合わせの中で、ちょっと気になる質問を何度かいただくことがあります。それは…

「シマノのホローテッククランクを付けたいです」

 

というもの。
実はこの「ホローテック」という言葉、ひも解いてみると実に厄介な単語なのです。

おそらく多くの方は、「ホローテック」と聞くと…

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こんな形状のクランクを…

 

 

 

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こんなボトムブラケットに取り付けて使用するものを想像されるのではないでしょうか。

 

 

でも、実はこのクランク、「ホローテック」じゃありません。
更に言ってしまうと、このボトムブラケットはもっと「ホローテック」じゃないんです。
では、本物の「ホローテック」とは何か。

 

 

 

これが本当の「ホローテック」です。

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「は???なにこれ???全然違うんだけど???」

そうお思いの方も多いでしょう。でもこれが、シマノが本来「ホローテック」と呼んでいる技術を採用した製品です。
多くの方が想像する、右クランクに軸が合体している、あのボリューム感あふれる製品の姿は影も形も見えませんよね。
でも、それもそのはず。そもそも、

「ホローテック」はクランクとBBの接続規格を表す名前ではない

からなのです。「あのクランク固定方式」を指す言葉ではないんですね。
では本来の「ホローテック」が指す単語は何なのか。
実は、「クランクアームが中空になっている」ことを意味する名称なのです。

 

 

 

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もともと金属加工の優れた技術を持つシマノは、クランクアームの重量剛性比を最大限に高めるためにアームを中空にすることを考えつきました。
普通なら、中実(中身が詰まっている状態)のアームに後から穴を開けたり、中空パイプを切削したり、あるいはアームの表と裏に相当する部材を貼り合わせて中空を再現するというのが思いつく製法。
しかし、これらの製法にはコストや強度などの点で弱点がありました。
そこでプレス加工技術に優れたシマノが取った方法は、
「アルミブロックをプレスして中を中空にする」というもの。
…意味が分かりません。どうやったら「外から圧力を加えるプレスで、中身を中空にする」のでしょう。
一説には「プレスの段階では中に砂のような粒子を入れ、加工が完了したら中から砂を抜いて蓋をする」という工程で製造しているという話もありますが、詳しいことはわたくしも存じておりません…

 

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じゃあ、直径24mmの軸が右クランクと一体化していて、外幅90mm(ロードバイクの場合)のBBに取り付けるあのクランクは何なのか。
それは「ホローテックII」なのでございます。

「中空クランクアームを、アームと一体化した24mm軸をBBに通して固定するクランク」というのが、ホローテックIIを名乗る基準となっています。

 

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ホローテックIIが生まれたのは、2002年にモデルチェンジしたXTR、M960シリーズ。

 

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FC-M960はその圧倒的な剛性の高さ、駆動ロスの少なさから、オクタリンクのクランクから交換するだけでバイクの性能が上がった可能ように錯覚してしまうほどの性能を誇りました。

 

「ホローテックでオクタリンク」も存在する

 

「ホローテック」はクランクとBBの接続規格を表す名前ではないので、旧世代の規格である「オクタリンク」タイプでホローテックのクランクも存在しました(現在ではラインナップから消滅しています。
というか、ホローテッククランクはシマノがオクタリンク全盛の時代に発表した物なので、当時は「中空で軽量なホローテッククランクは、(当時としては)最先端のオクタリンクタイプの特権」とでも言えるような存在だったのです。

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オクタリンクタイプのBBの例

 

 

ホローテックIIと同じBBを使う、ホローテックIIじゃないクランクがある

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じゃあ、「このタイプ(↑)」のBBを使うクランクはホローテックIIなの?と言われると、実はそうじゃなかったりします。
あくまで「ホローテックII」とは「クランクアームが中空で、アームと一体化した24mm軸をBBに通して固定するクランク」につく名前。
両者の条件を満たしていないクランクは、「ホローテックII」を名乗ることができません。
その実例がこちら。

 

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TIAGRAグレード、10速の「FC-4700」です。
見た目は105以上のクランクに似ているこちらですが、クランクアームは中空ではなく、少しでも重量を軽減するために裏側に肉抜きがされています。

 

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弊社京都店の過去ブログからの引用ですが、この画像が分かりやすいですね。

この「中空ではないけど、ホローテックIIと同じ軸・篏合方式」のクランクのことを、シマノでは「2ピース クランクセット」と呼んでいます。
旧来は右アーム、クランク軸、左アームの3つに分かれていたクランクが、右アーム+軸と左アームの2点に集約したという意味ですね。
そういう意味では、「ホローテックII」は2ピース構成なので、まとめて「2ピースタイプ」と呼び、その中でクランクが中空になっているものを「ホローテックII」と分類すれば通りが良さそうなのですが、どうもシマノの中ではそうではないようです。

 

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こちらはXTR FC-M9200のスペックシート。
「HOLLOWTECK II」にはチェックが入っていますが、「2-PIECE CRANKSET」にはチェックが入っていません。
シマノ的には、「ホローテックIIは2ピースクランクセットの一種」という扱いではないようなのです。

 

 

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こちらはFC-4700のもの。
中空アームではないので当然「HOLLOWTECK II」にはチェックが入っていません。

 

「あのクランク固定方式」に決まった名前は付いていないのか。
それを探っていたわたくしは、ついに南米スペックシートから見つけました…!

 

 

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“Outboard”!!!!

FC-R9200の適合BBに記載されたこの文言こそ、BB規格を表すもの!
よし!これから「あのクランク固定方式」のことは「アウトボード」と呼びましょう!!これで一件落着!!!

 

 

・・・となればよかったんですけどねぇ…
この「Outboard」という表記、実はクランク側のスペックシートにしかその記載はありません
肝心のBB側には、あろうことか「HOLLOWTECH II」としか書いていないのです。HOLLOWTECH IIじゃないクランクも装着可能なのに

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DURA-ACEグレードのBB、BB-R9100のスペックシート。
互換性の表記部分には「HOLLOWTECH II BOTTOM BRACKET」とだけしか表記がありませんが、HOLLOWTECH IIではないFC-4700も装着は可能です。

 

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もっと不思議なのは、TIAGRAグレードのBB、BB-RS501のスペックシート。
組み合わせることを想定しているFC-4700はHOLLOWTECH IIではないにもかかわらず、「HOLLOWTECH II BOTTOM BRACKET」としか表記されていないのです。そりゃあHOLLOWTECH IIのクランクも装着できるんですが…

さらにツッコミを入れてしまうと、「Outboard」とは本来、「船外(機外)の」といった意味。
ベアリングがフレームの外側にはみ出している、というニュアンスなのでしょうが、このタイプでベアリングがはみ出すのは、JISやITAなどのねじ切りBBや、BB30など一部のBB規格のみ。
当のシマノが開発した「PRESSFIT BB86」でも、アウトボードがアウトボードしないのです。

 

現在一大勢力をなす「T47」規格には、ベアリングが外にはみ出す「T47アウトボード」と、ベアリングがBB内に収まる「T47インボード」があります。「アウトボードがインボードする」ってなんだそりゃ?って話ですよね…

 現在一大勢力をなす「T47」規格には、ベアリングが外にはみ出す「T47アウトボード」と、ベアリングがBB内に収まる「T47インボード」があります。「アウトボードがインボードする」ってなんだそりゃ?って話ですよね…

 

結論

もうなんもわからん

クランクの取り付け規格の名称が複雑怪奇なことだけはわかりました。
もうこの規格の呼び名は「ホローテックIIとかのアレ」で良いのではないでしょうか。
わたくしは疲れました…

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