【シューフィッターの目線】絶対に続けたい連載今回のテーマは履き心地に影響を与える靴における重要な要素!「アッパー素材」のあれこれについて!【VOL.6】
by: 後藤悠介

 

 

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スポーツシューフィッター有資格者がおくる、靴選びに役に立つかもしれない情報や、シューフィッター目線での製品情報などお伝えしていきます。

 

今回のお題は「アッパーの素材」について!

 

 

前回の記事からまた間があいてしまいました…続けるって難しい。
気を取り直して今日も靴選びについて何か役に立つかもしれないお話をさせていただければと思います。

今回のテーマは「靴の素材」について。
これまでの靴選びに関しての知識の中では一番「余談」といっていい部分かもしれませんが、知っておけばなるほど!と言っていただける部分でもあります。
意外とこの部分に対しての意識が少ない方を多くお見受けします。
実は靴を履く感覚に対して重要な部分になります。
その大部分が前回ご紹介させていただいたラスト(靴型)になるわけですが、この素材の部分はそのラストに対してどう性格づけするかという役割があります。
ご自身の足のサイズとボリュームの関係、そしてそれに対する靴のラスト、そしてその靴を構成する素材…
早速自転車用シューズに用いられる素材の具体例を挙げて、それぞれの簡単な特徴と履き心地の傾向をご説明させていただきます。

 

まずは自転車用シューズといえばコレ!な、合成皮革!

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この手のシューズでは最もポピュラーな素材と言っても過言ではない合成皮革。
(ナイロンなどの)編物や織物にポリウレタンや塩ビなどを張り合わせたり塗ったりして成形した生地となります。
軽量かつ水に強いことから、悪天候の中での使用なども想定される自転車のシューズには非常に適した素材とされており、慣例的にこの素材が用いられてきた歴史があります。
それは現在も脈々と受け継がれており、数多のブランド、モデルに採用されています。
自転車のシューズ独特な外見はこの素材に由来するところも多分にあると言っていいのではないでしょうか。
先述のメリットがある一方で、履き心地に関しては注意すべき部分があります。
それは…「硬い」ということ。
素材の構造上柔軟性に乏しく、変形しにくいので足への圧迫感が強くなる可能性があります。
それ故にこの手のシューズ、特にこの合成皮革を使用したシューズに関しては、ご自身の足の特徴とラスト(靴型)の相性が非常に重要となってくるのです。

 

合成皮革に対するカウンター!天然皮革!

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合成皮革の硬さではしっくりくる履き心地のものが見つからない…という時にはコレ。
ごく一部ですが、天然皮革をアッパーに使用したブランドもございます。
当店では写真のLAKEがそれにあたり、カンガルーレザーや牛革などモデルによって巧みに使い分けをしております。
天然皮革最大のポイントはなんといっても「自然な馴染み」が出ること。
素材の素性上、圧がかかる部分は伸びが生じます。
これ故にボリュームの少ないラストでも上記の合皮にありがちな圧迫感が出にくくなるということです。
他方で天然皮革は初期投資が高価という事と、少々扱いに注意が必要で、革特有の取り扱い方を知識として持っておく必要があります。
しかしながら丁寧な扱いを心がけることで、合皮などに起きる素材の劣化による使用感の低下を防ぐことができ、ながく愛用していただける素材となっております。

 

番外編!変わり種のニットアッパー!

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近年採用するブランドが増えてきているニットアッパー。
これは文字通り繊維(糸)をある規則性を持たせて編み、靴のアッパーとしたものです。
代表的なのはイタリアの老舗サイクルシューズブランドであるDMT。
全ラインナップがニットアッパーという熱の入れようで、その新しい見た目や履き心地でブランドとして新しいファンを多く獲得し、再評価が進んでいます。
先述した合皮と似たような扱いやすさと抜群の通気性が特徴。
加えて編み方に規則性を持たせたり、使用する糸を工夫することで非常に足馴染みの良い柔らかさを出すことができます。
天然皮革ほどではないものの、履いた際のプレッシャーを和らげることが可能で、合皮シューズの既存ユーザーには賛否わかれる感覚といったところですが、長時間の着用には適しているといって良いでしょう。
合皮一強だったこのシューズジャンルにおいてはまだまだこれから…といった素材ですが、個人的にはとても可能性を感じていて、今後の広がり方に期待しています。

ざっくりとですが、靴選びの役に立つかもしれない「アッパー素材の特性による履き心地の違い」についてご説明させていただきました。

次回は!
これまでのコラムを一度総括して、私なりの靴選びのプロセスを一つの記事にまとめてみたいと思います。

なるべく早めに投稿したい…と思っておりますので乞うご期待。