【パワトレ】パワートレーニング用語集【試験に出るかもよ?!】
by: 永平 宏行

バイオレーサーの中の人です。
「パワトレ」もだいぶ浸透してきましたが、
まだまだその「用語」(FTP?NP?IF?VI?など)については、
疑問だらけの方が多いのではないでしょうか。

 

 

それらの用語を理解していただけるよう、
この投稿では、用語と解説をまとめてみました。

 

 

 

 

パワトレ用語集

 

 

 

 

並びは「かなの読み順」です。
アルファベットもそのまま「読み」です。
例 TSSの場合
○:てぃーえすえす
×:とれーにんぐすとれすすこあ
※数字は数字のままです。

 

希望の語句をサクッと見つけたい場合は、ブラウザの検索機能で
調べたい語句を入力すれば、その語句にアクセスできます。
(キーボードのCtrl+Fで、検索ウィンドウを出して、そこに語句を入力して検索)

 

 

文字ばっかりで堅苦しいですが、その点はご容赦ください。

 

また、疲労プロフィールや4分割分析などのより専門的な内容には触れていません。あくまでY’sパワトレブログの中に登場する用語を中心に構成しています。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 
用語 解説
IF

Intensity Factor=運動強度。FTPを基準にした運動強度の目安。FTPを「1」とした時に、比較対象の運動強度がどの程度かを表す。NP(ノーマライズドパワー)÷FTPで計算する。
例えばあるライドのIFが0.5であれば、FTPの半分の運動強度だったということ。LEVELやZONEと表現は違うが、表そうとしていることは同じ。
平均パワーではなくNPを使う理由はIFは「出力」ではなく、「運動強度」の指標であるため。

 

 

IF<0.75 L1回復走
IF0.75~0.85 L2耐久走
IF0.85~0.95 L3テンポ走
IF0.95~1.05 L4乳酸閾値
IF1.05~1.15 L5以上
(パワートレーニングバイブルより)

 

 

パワーの絶対値ではないので、ライダー間の運動強度を比較する物差しとして使える。FTP200WのライダーAと、FTP300WのライダーBだと、同じ耐久走レベルの負荷で運動してもパワーの「値」は異なる。しかし、その時のIFは2人とも等しくなる。仮に2人ともIFが0.75~0.85の範囲に入っていたならば、2人に掛かった身体的負荷は同じ耐久走レベルだったと言える。

 

 

もし60分全力走のインテンシティーファクターが1を超えるようなら、解析ソフト上のFTPの設定を更新しなければならない。理由は、60分全力走の平均パワー=FTP=IF1.0であるから、60分全力走のIFが1を上回る事はないため。定期的にFTPテストを行い、ソフト上のFTPの設定を正しく更新しないと、運動強度の指標としての正確性が担保できない。

 

インテンシティーファクター自体には時間の概念は無いので、同じIF1.0の運動でも20分と60分では、トレーニング負荷は異なる。時間も含めて負荷を数値化したものがTSSである。

インターバルインテンシティー

ある運動時間における、過去の最大平均パワー(MMP)に対する、比較対象の運動強度の比率。20分MMPの自己最高記録が300Wのライダーの、あるライドの20分MMPが280Wだった場合、インターバルインテンシティーは、280÷300=0.93となる。

 

インターバルトレーニングのMSとRESTの強度・時間配分の適切さを判断する指標にもなる。インターバルトレーニング全体(MSとREST)のインターバルインテンシティーが、70%~90%になるのが適切な範囲。
RESTも参照。

 

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SST

Sweet Spot Training。FTPを向上させるのに最も効率の良いトレーニング。FTPの88%~94%の運動強度。

 

 

FTP向上メニューの定番は、WU L2 10分、MS SST20分、REST L2 10分、MS SST20分、CD L1~L2 10分。
MS(メインセット)の時間と回数は練度によって変更可。
例:MS15分SST×2など。

NP

Normalized Power=標準化パワー。運動強度を表せるよう補正したパワー値。
運動中にパワー値の上下が大きい時、平均パワーではその時の運動強度を正確に表すことはできない。そこで計算によって、平均パワー値に補正を掛けて、実際に身体にかかっていた生理的負荷をパワー値で表せるようにしたもの。

ざっくり言うと「強度の上げ下げはあったけど、実際のところ、このぐらい体に負荷がかかってたよね?」という計算上のパワー値。
パワー値の上下がほとんどない一定ペース走の場合、NPと平均パワーの差はほとんど無くなる(平坦のTTや斜度一定のヒルクライムなど)。

 

 

計算方法は以下の通り。
①30秒ごとの平均パワーを算出する、②それぞれを4乗する、③それらの平均を出す、④その4乗根を算出する
これがサイクルコンピューターや解析ソフトで計算される。

 

 

平均パワーとNPの比である、VIでその運動がどの程度の「上げ下げ(変動幅)」があったかを表せる。VIを参照。

 

 

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FTP

Functional Threshold Power=機能的作業閾値パワー。1時間継続できる上限のパワー値。持久的運動能力の指標として使われる。
この値を基に「レベル(L)」や「ゾーン(Z)」と呼ばれるトレーニング強度を設定する。トレーニングの効果や体調によって常に変化するので、固定的な値ではない。よって、トレーニングの進捗に合わせて、定期的に測定する必要がある。測定頻度は1ヶ月~2ヶ月に一度が一般的。

 

 

計測方法はコーガン式が主流で、20分間の全力運動をした際の平均パワー(20分のMMP)×0.95で求める。この方法を採るのは1時間の全力運動は、体力的にも精神的にもきつく、継続的に何回も取り組むには無理があるため。

 

 

FTP=運動能力ではあるが、必ずしもFTP=速さとはならない。FTPはあくまで速さを構成する一要素であり、速く走るためにはFTPの他にスキルやフォーム、ペース配分や、レースであれば駆け引きなど他の要素も大きく影響する。
FTPはライダーの戦闘能力を表す、とよく表現されるが、戦闘能力を「活かす」ことができて、初めて「速さ」に繋がる。FTPを活かす能力が高ければ、低いパワー値でも速く走ることができるので、FTPの向上だけでなく、走りの経済性=エコノミーを高める取り組みも同時に必要。

MS MS=Main Set。メインセット。インターバルトレーニングにおける強度の高いパート。MS:2×5分L4などと表記する。
MMP Mean Maximal Power=最大平均パワー。任意の運動時間における、平均パワーの最大値。
用例「20分MMPは先月280Wだったが、トレーニングの成果でMMPを更新し、今月は285Wに上昇した」など。

60分MMP=FTPとなる。
L1 LEVELを参照
L2 LEVELを参照
L3 LEVELを参照
L4 LEVELを参照
L5 LEVELを参照
L6 LEVELを参照
L7 LEVELを参照
LT Lactate Threshold=乳酸閾値。LTとはぎりぎり疲労せずに長時間続けられる有酸素運動の限界値。パワートレーニングのL4領域にあたる。FTPもこの領域に含まれる。
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回復走 LEVELを参照
KJ

キロジュール。エネルギー、熱量、仕事の単位。1Jの1000倍。1Jは約100gの物体を1m持ち上げる際に必要なエネルギー。単位が違うだけで、Kcalと表そうとしているものは同じ(熱量)。

 

 

1Kcal=4.184KJであり、1Kcalは1KJの約4倍。ただし、運動で消費したカロリーに換算する場合は、運動の際の熱効率が約1/4であることを考慮して、おおよそ1:1と考えても実用上支障ない。あるライドでパワーメーターで計測された仕事が2000KJだった場合、2000Kcal消費したということ。

 

 

脂肪を1Kg減らすのに必要な熱量は約7200Kcalと言われており、すなわち7200KJの熱量を消費する運動が必要となる。
・基礎代謝で消費する熱量
・日常生活で消費する熱量
・運動で消費する熱量
・食事から摂取する熱量
これらを数値化すれば、エネルギー収支が計算できるので、どの程度の運動をどの程度の期間行えば、何キロダイエットできるか(あるいは太るか)がシミュレーションできる。

CD CD=Cool Down。クールダウン。トレーニングの最後に行う強度の低い運動。心拍を落ち着かせ、疲労物質の新陳代謝を促し、疲労回復を促進する。
神経筋パワー LEVELを参照
ZONE FTPを基に設定する運動強度の基準。略称「Z」で表す。LEVELと同意。LEVELを参照。
耐久走 LEVELを参照
WU WU=Warm Up。ウォームアップ。トレーニングの前に行う暖気運動。メインセット(MS)の高強度の運動に備えて、体を温めるために行う。心拍を上昇させ、筋肉の血液循環を活発化させる。
通常10分~15分程度、L1~L2強度で行う。
間に高回転ペダリング1分×数本で刺激を入れることもある。
TSS

TSS=Training Stress Score。疲労度を表す数値。強度と時間の両方が反映されている。この数値を用いることでオーバートレーニングを防ぎ、トレーニングを適切な負荷の範囲で管理できる。
FTPでの1時間の運動=TSS100=IF1.0。

 

 

一般的に、以下のように疲労度を分類。
(パワートレーニングバイブルより)

 

TSS<150   強度:低い 通常は翌日には完全に回復
TSS150~300  強度:中程度 翌日はやや疲労が残るが通常は翌々日には回復
TSS300~450  強度:高い 翌々日でもいくらか疲労が残ることがある
TSS>450   強度:かなり高い  数日間は疲労が残る

 

 

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テンポ走 LEVELを参照
乳酸閾値 LEVELを参照
パワーウェイトレシオ

体重1kgあたりのパワー値。Power Weight Ratio=PWRと略す。
パワー値÷体重で計算し、W/kgで表す。

 


登坂抵抗が発生するヒルクライムでは、このPWRがタイムに影響する。逆に平地ではPWRよりもパワーの絶対値の方が重要。同じ300Wを出せるライダーが2人いても、片や体重60kg、片や体重70kgであれば、前者は5W/kg、後者は4.26W/kgとなり、前者の方が登坂に有利。ヒルクライマーが減量にやっきになるのはこのため。

 

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パワープロフィール

特定の運動時間における、MMPのパワーウェイトレシオを並べ、ライダーのレベルと脚質(得意・不得意)を分析するためのツール。

 

MMPを抽出する運動時間は、5秒、1分、5分、60分(20分)が一般的。これらの時間は、それぞれ、5秒:L7(神経筋域)、1分:L6(無酸素域)、5分:L5(VO2Max域)、60分:L4(乳酸閾値域)に相当する。

 

 

コーガン博士らが作成したパワープロフィールの一覧表に当てはめることで、自身が全アスリートの中で、どの運動強度なら、全体の中でどの程度の位置付けなのかがわかる。
また、スプリンターなのか、タイムトライアル向きなのか、オールラウンダーなのかといった、脚質の判断も可能。
じてトレさんのサイトでパワープロフィール一覧表のエクセルがダウンロードできる。
男性用女性用

 

 

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VI

Variability Index=変動性指標。平均パワーに占めるNPの割合。運動強度の変動幅を表す指標。NP÷平均パワーで求める。
目標とする競技や乗り方に対して、トレーニングで適切な強度変化を与えられているかを検証できる。

 

 

以下は標準的なVIの値。
(パワートレーニングバイブル記載の内容を元にまとめました)

 

・ヒルクライムや平地でのロードレース 1.00~1.06
・平地でのクリテリウム 1.06~1.35
・平地でのTT 1.00~1.04
・アップダウンのあるロードレース 1.20~1.35
・アップダウンのあるクリテリウム 1.13~1.50
・MTBのレース 1.13~1.50

VO2max

最大酸素摂取量のこと。この値が高いほど、有酸素運動能力に優れている。LTとの違いはVO2Maxは有酸素運動の「上限の限界値」で、LTは「ぎりぎり疲労せずに長時間続けられる限界値」と表現できる。パワトレの運動領域ではL5に相当。

 

 

成人までの運動歴によって上限が決まり、30歳ごろから徐々に下降すると言われている。

 

 

FTPの上限はVO2Maxに対して最大80%~90%までと言われており、VO2Maxの開発はFTPの向上にも結び付く。
LEVELも参照。

無酸素運動容量 LEVELを参照
REST

レスト。インターバルトレーニングにおけるメインセット(MS)間の強度の低いパート。REST INTERVAL=RIと略すこともある。
通常L2程度だが、レストの強度を変えることで、インターバルトレーニング全体の強度をコントロールできる。

 

例えばレストの強度が高ければ、全体の強度も高くなる。
通常、インターバルトレーニング全体のインターバルインテンシティーが、70%~90%になるように強度を設定する。
過去の同じ運動時間のMMPに対して、MSとRESTの調整で70%~90%の強度になれば、適切な強度のインターバルトレーニングが行えているということ。

 

 

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LEVEL

FTPを基に設定する運動強度の基準。略称「L」で表す。ZONE(略称「Z」)と同義。通常7段階に分類され、以下のようになる。

 

( )内の%は対FTP比、[ ]内の表現は主観的運動強度
(パワートレーニングバイブル記載の内容を元にまとめました)

 

 L1(~55%):Active Recovery 回復走[楽である]
 L2(56~75%):Endurance 耐久走[ほどほど]
 L3(76~90%):Tempo テンポ走[ややきつい]
 L4(91%~105%):Lactate Threshold 乳酸閾値[きつい]
 L5(105~120%):VO2max 最大酸素摂取量[かなりきつい]
 L6(121~150%):Anaerobic Capacity 無酸素運動容量[非常にきつい]
 L7(151%~):Neuromuscular 神経筋パワー[最大限]

 

 

この値を指標にトレーニングやペーシング、結果分析、シミュレーションが行える。
じてトレさんのサイトで計算ツールが掲載されている。
パワー・トレーニング・ゾーン計算ツール【PTB】
WEB版エクセル版

 

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